
苗名の滝
水しぶきを上げて豪快に流れ落ちる苗名の滝。その轟音が周囲に響き渡る様子が地震(なゐ)のようだと言われたことが名前の由来です。「日本の滝百選」にも選ばれています。
掲載:2019年 vol.37
[上越] 四季折々の自然を全身で感じられる妙高高原。
日本海側に面し、全国でも5番目の面積を誇る新潟県。全長約330kmの長い距離ゆえに同じ県内でも地理的要素が多様で、上越市を中心とする「上越地方」・長岡市を中心とする「中越地方」・新潟市を中心とする「下越地方」、そして佐渡市からなる「佐渡地方」の4つの地域に大きく分けられます。
地図上では、北から南へ向かって下越・中越・上越と並んでおり、これはかつて日本の都が京都にあった際、京都に最も近い地域を「上」としたことが由来とされ、新潟県以外でも同様の理由で名前が付いた地域が全国にあります。
上越地方で、四季折々の絶景を満喫できるのが妙高高原です。長野県との県境近くに位置し、春は桜や菜の花、夏は笹ヶ峰牧場の新緑が素晴らしく、秋は一面の紅葉に目を奪われます。スキー場や温泉もあるため、冬には美しい景色に加えてまた一層の楽しみが増えます。近くにはハイキングやトレッキングのコースが整備されており、大自然に包まれて心身ともにリフレッシュできるでしょう。


いもり池
妙高山のふもとにある「いもり池」。この季節、色とりどりの紅葉を水面に写します。周囲には遊歩道があり、1周約15分で周ることができます。
[中越] 古くから篤い信仰を集める、
越後の一宮・彌彦神社。

中越地方に広がる霊峰・弥彦山の麓に鎮座する彌彦(やひこ)神社は、越後の一宮(いちのみや)です。一宮とは、日本の旧諸国で定められたもっとも格式高い神社のことで、その由緒や信仰の篤さによって、平安時代から鎌倉時代にかけて成立したと言われています。彌彦神社は約2000年前の創建と伝わる古社で、万葉集の歌にも詠まれています。商売繁盛や良縁成就などのご利益があり、「おやひこさま」と呼ばれて大変親しまれています。清々しい空気に満ちた境内や社殿の美しさはもちろん、緑豊かな参道も、参拝の楽しみの一つです。願いごとを念じながら石を持ち上げ、軽く感じれば願いが叶うと言い伝えられる「津軽火の玉石」や、日本有数の太刀・地元ゆかりの美術品が納められた「宝物殿」はぜひ立ち寄りたいところ。また、鹿苑では神の使いとされる愛らしい鹿たちに出合えます。



愛らしい表情で寄ってくる鹿たち。タイミングが良ければ、えさをあげることもできる。
見渡す限り田んぼが連なる、美しい棚田の風景。

越後湯沢から十日町周辺は、群馬県との県境の山あいに位置し、素晴らしい棚田が点在しています。その見晴らしと、時間によって刻々と変える表情が特に人気を集めているのが「星峠の棚田」です。春は水を張った田んぼが水鏡のように空を映し、夏は青々と鮮やかな水稲が育ち、秋には黄金色の稲穂が夕日に輝きます。また冬には真っ白な雪が田んぼ一面を覆い、見渡す限りの銀世界が広がります。明け方に立ちこめる朝靄(あさもや)も美しく、その眺めを楽しむために一年・一日を通して多くの人が訪れます。
美味や工芸品も見逃せない!中越の名産品


寺泊の魚介
近海で獲れた新鮮な魚介類がずらりと並ぶ、魚の市場通り。「魚のアメ横」とも呼ばれ、通り沿いでは焼きイカなど露店のようなグルメも並ぶ。

上)十日町のへぎそば
そば粉に、「ふのり」という海藻を加えたこの地域独自のそばで、ほのかな緑色とつるつるとした喉ごしが特徴。
右)小千谷縮の雪ざらし
小千谷市を中心に作られている麻の織物。手作業で多くの工程を経て作られ、指定の要項に沿ったものは国の重要無形文化財・ユネスコの無形文化遺産にも登録されている。

[下越] 見事な茅葺きの武家屋敷や、
豪奢な商家が残る村上の町。

新潟県の最北に位置する村上市は、かつて村上藩の城下町として栄え、今も当時の武家屋敷や商家、街並みが残っています。
200年以上前に建てられた若林家住宅は、村上藩の中級上位の家柄の藩士のもので、国の重要文化財に指定されています。見事な茅葺きの平屋建てで、侍屋敷の特徴である東西南北に棟のある「曲屋(まがりや)造り」になっています。
その他にも、村上市内では旧成田家住宅をはじめ旧嵩岡家住宅、旧岩間家住宅、旧藤井家住宅の4つの武家屋敷が復元され、一般公開されています。また2002(平成14)年からは市民による「黒壁プロジェクト」が開始。既存のブロック塀に、簡易工法で板を打ち付け黒く塗り、昔ながらの城下町の景観に戻す活動を続けています。
村上市には2つの名物があります。その一つは鮭。市内を流れる三面川(みおもてがわ)には、秋になると鮭が溯上し、10月下旬から鮭漁が始まります。12月頃には塩引きにした鮭が各家の軒先に吊るされ、その様子は村上の冬の風物詩となっています。


イヨボヤ会館
イヨボヤとは、村上の方言で「鮭」のこと。三面川の鮭に関する歴史や文化などを知ることができる施設。
もう一つの名物はお茶です。村上は茶処の北限と言われる地域。一年を通して日照時間が短いため、渋みが少なくほど良い甘みがおいしいお茶が育ちます。

村上茶
約400年の歴史がある村上茶。決して茶の栽培に適していると言えない土地ながら、先人の努力により根付いた。最近は村上茶の紅茶も。

羽越しな布
シナノキやオオバボダイジュなどの樹皮から取れる繊維で糸を作り、布状に織り上げた織物。ざっくりとした手触りと素朴な風合いが特徴。
日本海側で最大級の都市・新潟。
歴史ある重要建築物も必見。

村上市と同じく下越地方に位置する新潟市は、新潟県の中心としてはもちろん、本州の日本海側の最大級都市であり、唯一の政令指定都市でもあります。市の中心を流れる信濃川の河口部には古くから港が開かれ、幕末の日米修好通商条約における開港五港の一つにもなりました。現在も水陸の交通の要衝です。
新潟市の象徴の一つでもある萬代橋(ばんだいばし/よろづよばし)は、1886(明治19)年に初代が竣工。架け替えにより3代目になる現橋は、側面に御影石を施した6つのアーチを連ねる美しい橋です。日本の建築史上、文化的な価値が高いとされ、2002(平成14)年に土木学会選奨土木遺産に、2004(平成16)年には国の重要文化財に指定されました。
赤い屋根が印象的な新潟県政記念館も素晴らしい木造洋風建築で、もとは新潟県の県会議事堂でした。その後、郷土資料館や県庁分館として使用されてきましたが、国の重要文化財として指定を受け、現在は一般公開されています。現存する明治初期の議事堂としては、国内唯一の建物です。

にぎわい市場ピアBandai
JR新潟駅からほど近く、地元の新鮮な魚介や野菜をはじめ、お土産品も豊富に揃う市場。

新潟県政記念館
[佐渡] 船板壁の家々が集まる、
どこか懐かしい宿根木集落。
佐渡島は、新潟県の西部にある島で、日本の島の中では沖縄本島に次ぐ面積を誇ります。対馬海流(暖流)が沖合を流れている影響で、新潟県の本州側と比べて冬は積雪が少なく、また夏は海風の影響で涼しいのが特徴です。また、暖流と寒流の接点に位置しているため、植物や生物の生態が極めて多様で、同じ島内で北海道と沖縄の両方の植物が生育しているという珍しい地域でもあります。
宿根木(しゅくねぎ)地域は、古き良き港町の風景が残るエリアです。江戸時代に北前船の寄港地として発展し、廻船業の人々が住んでいたことから、船板壁の家屋が多く建てられました。軒下飾りや看板に趣向を凝らした家もあり、船大工の熟練の技術や工夫、遊び心が感じられます。こうした家屋が約1km四方に集まる集落は、国の伝統的建造物群保護地区に指定されています。


小木港で体験したいのが、「たらい舟」です。たらいを舟として利用するようになった理由は諸説ありますが、一説に岩礁の多い小木海岸でサザエやワカメを採るためには、小舟よりたらいの方が安定感があり小回りも利くため、洗濯桶を改良して作られたとも言われています。乗船時間は約10分。船上から眺められる朱色の太鼓橋や島々も絶景です。
能楽との縁が深い佐渡。
今も伝統の舞と舞台が生きている。
佐渡は能楽の大成者である世阿弥(ぜあみ)が配流された地で、その後能は佐渡に浸透し、今も大切に受け継がれています。かつては島内に200以上の能舞台があり、豊作を願って謡い舞われてきました。現在でも30を超える能舞台が残っており、その数は全国の1/3を占めるといいます。毎年薪能や定例能が演じられ、気軽に能の世界に触れることができます。

大膳神社
食物を司る御食津大神(みけつのかみ)を祀る古社。境内にある立派な藁葺きの能舞台は、佐渡に現存する最古の由緒ある能舞台で、古くから能が演じられている。

江戸幕府の経済を支えた、日本で最も有名な金山。

1601(慶長6)年に発見された佐渡金山。産出された金・銀は江戸幕府の経済基盤を築きました。現在は約400kmにわたる坑道の一部が公開され、等身大の人形が当時の採掘の様子を再現しています。
また近くには北沢浮遊選鉱(ふゆうせんこう)場もあります。ここでは佐渡金山で採掘された鉱石から、有用な鉱物と不要鉱物(脈石)を分離する作業を行っていました。1937(昭和12)年に建設され、幅115m、奥行き80m、高さ35mを誇ります。月間5万トン以上の鉱石処理機能を持つ、東洋一の選鉱施設でした。しかし操業からわずか15年で閉鎖。今では木々が生い茂り、独特の雰囲気を醸し出しています。有名なアニメーション映画の風景と雰囲気が似ているとも言われ、世界中から幅広い年代の観光客が訪れます。
潤沢な水に恵まれた、米どころ・酒どころ。
佐渡は水に恵まれた地域で、米どころでもあります。岩首昇龍棚田や片野尾棚田、小倉千枚田など、数々の美しい棚田が広がっています。
おいしい水とお米があるところでは、素晴らしい日本酒も生まれます。江戸時代、佐渡には多くの蔵元がありました。現在でも5つの酒蔵が地酒を造り続けており、その品質の高さから大手航空会社のファーストクラスで採用される他、海外の品評会でも高く評価されています。

岩首昇竜棚田
越後の里山と港町をゆく NIIGATA「新潟」旅のおさらい

妙高高原(ビジターセンター)
妙高市関川2248-4
アクセス〈最寄〉:しなの鉄道 妙高高原駅 下車、車で約10分

彌彦神社
西蒲原郡弥彦村弥彦2887-2
アクセス〈最寄〉:JR弥彦駅から徒歩で約15分。

魚の市場通り(寺泊)
長岡市寺泊下荒町
アクセス〈最寄〉:JR寺泊駅から車で約15分。

若林家住宅
村上市三之町7-13
アクセス〈最寄〉:JR村上駅から徒歩で約25分。

新潟県政記念館
新潟市中央区一番堀通町3-3
アクセス〈最寄〉:JR白山駅から徒歩で約13分。

宿根木集落
佐渡市宿根木
アクセス〈最寄〉:小木港から車で約10分。

史跡佐渡金山
佐渡市下相川1305番地
アクセス〈最寄〉:両津港から車で約50分。
おすすめの宿

佐渡リゾート ホテル吾妻
「夕陽に一番近い宿」として知られる、絶景のお宿。日本海が一望できるロケーションで、地元の旬の食材をふんだんに用いた料理も自慢です。素晴らしい泉質の温泉や、佐渡おけさ鑑賞などの催しも人気で、国内外から多くの人が訪れます。
新潟県佐渡市相川大浦548-1
アクセス:両津港から車で60分
お問い合わせ:0259-74-0001
一部写真提供 : 公益社団法人 新潟県観光協会、©新潟観光コンベンション協会