透析を受けながら活躍する人々

掲載:2021年 vol.41

山下 隆志さん

透析を始めることになった時、「これまでの生活と変わってしまうと思ってつらかった」と話す山下さん。同じ透析患者さんへ「透析をしていると大変なこともあります。でも、やれることもたくさんあります。プラス思考と気力が大切です。一緒に透析生活を楽しみましょう」。

これからもみんなが良い透析治療を続けられるよう、
患者会活動の大切さを次の世代に伝えたい。

山下 隆志 さん

特定非営利活動法人 兵庫県腎友会 理事
神戸ブロック 副ブロック長

1950年、静岡県浜松市生まれ。高等専門学校を卒業後、三菱重工株式会社に入社。京都工場で2年勤務後、建設機械を生産する兵庫県明石工場に転勤。その後、米国最大の建設機械メーカー・キャタピラー社との提携の関係で途中社名が変更となり、主に生産技術部門で勤務。アメリカ・シカゴでの勤務や、品質保証部門の管理職などを経て、60歳で定年退職。関連の物流会社に10年間務め、2020年に退職。一方、21歳で急性腎炎を発症し、その後遊走腎、さらに慢性腎不全と診断される。7年間の保存期を経て、59歳の時に血液透析を導入。現在は、兵庫県腎友会の理事として活動する他、読書やウクレレなどの趣味を楽しむ毎日を送っている。

21歳の急性腎炎から慢性腎不全に。7年の保存期を経て、59歳で血液透析を導入。

 私は静岡県浜松市の出身です。高専を卒業後は、三菱重工に入社。赴任先は京都工場でしたが、2年後に建設機械を生産している兵庫県明石工場に転勤。その後、米国最大の建設機械メーカー・キャタピラー社との提携の関係で途中社名が変更となりましたが、主に生産技術部門で勤務しました。海外への出張や赴任も経験し、品質保証部門の管理職などを経て60歳で定年退職。関連の物流会社でさらに10年間勤め、2020年に退職して今に至ります。

 私が透析を導入したのは2009年で、59歳の時でした。きっかけは、今思うと随分遡りますが、21歳での急性腎炎だったと思います。扁桃腺が腫れて1ヶ月ほど入院したのですが、それ以来、尿検査で尿蛋白がプラス1になることが続いていました。38歳の時、心配になって大きな病院で検査を受けると、「遊走腎」と診断されました。遊走腎とは、本来の位置よりも腎臓が下がってしまう状態のことで、そのため尿管が圧迫されて血尿が出て、尿蛋白の値がプラスになっているのだろうと医師から説明がありました。

山下 隆志さん

昔から多趣味だという山下さん。学生時代から水泳、テニス、ゴルフ、山登り、ギターなどを楽しみ、現在はウクレレやオカリナに夢中。今はウォーキングを兼ねて、近隣で行われるラジオ体操にも出かけている。

 2002年、人間ドックを受けたところ慢性腎不全と診断され、保存期の治療が始まりました。ゆくゆく透析を導入することも伝えられましたが、まだまだ自覚症状はなかったので実感も薄く、とにかく塩分制限のある食事療法がつらかったのを覚えています。それでも7年間続いた保存期の最後の1年近くは、ひどい貧血でふらつくようになり、体も常にだるい状態でした。この頃になってようやく透析を意識するようになり、「透析が始まってしまうとなかなか旅行ができなくなる」と考えて2009年にスペインに出かけました。そして続けてイタリア旅行を計画し、予約も済ませた後で医師に話したところ「とんでもない!」と反対され、仕方なくキャンセル。この年の12月に血液透析を導入しました。

 透析に際しては、大きく2つの選択がありました。1つは治療方法で、導入の際には医師から血液透析や腹膜透析、腎移植などの説明がありました。さまざまな選択肢の中から、私は施設での血液透析を選び、現在は週に3回4時間行っています。

 もう1つの選択は仕事でした。60歳で定年退職した後、再雇用の道もあったのですが、ちょうど透析導入の時期と近かったこともあり、私の状況を分かった上で迎えてくれる関連会社に勤めることにしました。ここでも10年間お世話になり、一昨年退職してからは夫婦でゆったりと過ごしています。

 今は、兵庫県腎友会の理事として活動しています。透析患者さんの平均年齢は高齢化し、2025年問題も深刻になってきていると感じます。患者会に入会している患者さんは年々少なくなっていますが、私たちが今の自己負担で透析治療を受けられるのは、先達の患者さんたちが切実な思いで国に働きかけた努力の賜物です。これからもより良い治療を続けられるよう、次の世代にも患者会活動の大切さを伝えていきたいと思っています。

 一方普段の毎日では、昨年からのコロナウイルス感染症の流行で外出は控えていて、近所で軽い運動をする以外は自宅にいることが多いです。透析中は、食事をしたりよく本を読んでいます。読書は好きで、2008年から現在までで390冊読んでいます。以前は仕事関係の本が中心でしたが、最近は歴史小説や推理小説を楽しんでいます。昔からいろいろな趣味があるので、そんな時間も楽しいですが、早くコロナウイルス感染症の流行が終息して、子どもや孫にもっと自由に会える日が待ち遠しいです。

※2025年問題…第1次ベビーブーム(1947~1949年)に生まれた世代が後期高齢者(75歳)の年齢に達し、医療や介護(福祉)などの社会保障費の急激な増加が懸念される問題。