
透析患者さんでミネラルとホルモンのバランスが崩れる理由
健康な人ではミネラルのバランスが保たれている
リンとカルシウムはどのように体内に取り込まれるのでしょうか―それは、私たちが毎日食べる食事からです。
食事によって体内に入ったリンは、一部は腸で吸収され骨などの必要な組織に運ばれますが、吸収されなかった残りのリンは便と一緒に体の外へ排泄されます。健康な人は、腸で吸収されたリンと同じ量のリンが腎臓から尿へ排泄されるため、リンが体の中にたまることはありません。
またカルシウムも同様で、健康な人ではカルシウムの吸収と排泄のバランスが保たれているため、差し引きゼロになります。
生体内で重要な働きをもつミネラル―「リン」
透析患者さんにとって重要なミネラルのひとつに「リン」があります。
リンは体内におけるミネラルの中でカルシウムに次いで2番目に多く、その85%がカルシウムとともに骨や歯をつくる成分となっており、骨・歯を「硬く」するもとになっています。
またリンは細胞内にも存在し、DNAや細胞膜の成分となるほか、細胞が働くときのエネルギーをつくるなど、生体にとって重要な役割を担っています。
透析患者さんでは体内にリンが蓄積して「高リン血症」に
ところが、透析患者さんでは腎臓の機能が低下しているため、腸で吸収された分のリンを尿へ排泄することができず、体の中にリンがたまってきてしまいます。
「透析」を行えばリンを体の外へ出せますが、1回の透析で体外へ排泄できるリンの量は健康な人の2/3程度であり、1/3が排泄できずに体内に蓄積されてしまいます。
このように透析には限界があるため、体外へ排泄することができなかったリンが徐々に体内にたまってきて「高リン血症」になります。

透析患者さんでは活性型ビタミンD3が不足するため、「低カルシウム血症」に
また、透析患者さんでは腎臓でつくられる活性型ビタミンD3(血液中のカルシウムを増加させる働きがある)が産生されなくなるため、血液中のカルシウムが低下してしまいます。
さらに、体内にリンがたまると、カルシウムはリンと結合するために血液中のカルシウム量はますます低下して「低カルシウム血症」になります。
「低カルシウム血症」、「高リン血症」が副甲状腺を刺激し 「二次性副甲状腺機能亢進症」に
血液中のカルシウムが低下すると、今度は副甲状腺で産生されるホルモン(副甲状腺ホルモン:PTH)の分泌量が増加します。PTHは骨からカルシウムを血液中に放出する働きをもっていて、血液中に必要なカルシウム量を維持しようとします。
また透析患者さんでは「高リン血症」の状態が続くため、体内にたまったリンが副甲状腺を刺激し、PTHの産生を促します。リンによって長期間刺激され続けた副甲状腺は腫大し、やがて血液中のカルシウムの量に関係なくPTHが過剰に分泌されてしまう「二次性副甲状腺機能亢進症」になります。