ココを押さえれば食事がもっと楽しくなる !3つのツボ

2012年 vol.10 掲載

「“食”という字は“人に良い”と書きます。食べることは、心と体にとって栄養。まさに楽しみであり、生きがいなのです」。そう話される、川崎医科大学附属病院の市川和子先生に、透析患者さんが留意しながらも楽しめる、食事のポイントについて教えていただきました。

食事のポイント1カリウム

カリウムが多い食品は、食べる量を上手にコントロールして

 腎臓疾患の患者さんが特に留意しなければならない重要な成分は、カリウムです。患者さんの中には、「生野菜や果物が好きだけれど、できるだけ控えている」という方も多くいらっしゃいます。しかし肝心なのは、こういったカリウムの多い食品をただ減らすという考え方ではなく、食べる量をいかに無理なくコントロールできるかという視点です。例えばパイナップルの場合、食べやすくカットしてお皿に盛ると、ほんの少しの量に見えます。でも中をくり抜き、皮を器にして果物缶などと組み合わせて盛り付ければ、実際に生で食べる量は同じでも、見た目に豪華でたくさん食べられるように感じることができます。ただ控えるのではなく、楽しみながら続けられる工夫をするのも、毎日の食事を豊かにする第一のツボです。

食事のポイント1:カリウム カリウムが多い食品は、食べる量を上手にコントロールして

食事のポイント2水分・食塩

うす味の食事を心がけ、夏はたっぷり汗をかきましょう

食事のポイント2:水分・食塩 うす味の食事を心がけ、夏はたっぷり汗をかきましょう

うす味の食事を心がけて習慣にすれば、体への負担が少ない透析につながります。

 カリウムと同様、水分と食塩にも日々気を付けたいものです。食塩の多い食事をすると、そのぶん水分を摂りたくなります。水分の摂取量が多いと、結果的に体重が増え、透析時に身体への負担が増すことに。1回の透析時間の中で、減らす体重が2キログラムの場合と、4キログラムの場合では、心臓や身体にかかる負担が随分違います。透析をできるだけ楽にするには、普段からうす味の食事を心がけることです。習慣になれば、自然と水分を控えられるようになります。

 

 また、これからの季節は、たっぷり汗をかくこともおすすめです。汗は、水分だけでなく食塩を多く含んでおり、毛穴から老廃物が排出されます。何といっても、汗をかいた分だけ水も飲めます。透析以外でこうして老廃物や余計な水分を排出する方法と、うす味に慣れることで過剰な水分を摂らない習慣を身に付けることが第二のツボです。

食事のポイント3リン

必要な栄養を適切に摂取し、毎日の食事を楽しむことが大切

 長期的な視点からみた時に注意したいのが、リンです。リンは骨や歯をつくる上で欠かせない成分で、肉や魚、卵黄など蛋白質の多い食品に含まれています。リンに注目するあまり、これら蛋白質を含む食品を過度に控えると必要な栄養素も摂れず、低栄養を招いてしまいます。また、特に肉などに多いL-カルニチン系のアミノ酸や蛋白質もしっかり摂取しなければ、体内でエネルギー代謝がうまく行われず、免疫にも支障をきたします。そうすると、感染症を起こすリスクが高まりやすくなります。また、リンは旨み成分の一つでもあるため、食事をおいしく感じる重要な栄養素でもあります。毎日の食事を楽しむためにも、リンとうまく付き合うことは一生を通して大切だと思います。そのために、効果的で飲み続けやすいリン吸着薬を上手に活用することが第三のツボです。

食事のポイント3:リン 必要な栄養を適切に摂取し、毎日の食事を楽しむことが大切
市川 和子 先生

お話を伺った先生

川崎医療福祉大学 医療技術学部 臨床栄養学科 特任准教授
市川 和子 先生

腎臓疾患の患者さんや透析をされている方を中心に、栄養指導を実施。チーム医療の一員として、栄養面から患者さんをサポートされています。臨床透析や栄養ケアに関する著書も多数。