透析患者さんのこころの健康

CKD患者さんや透析患者さんはさまざまな不安を抱えています

 CKD(慢性腎臓病)の患者さんや透析患者さんの多くは、心に大きな不安を抱えておられます。体調が揺らぎ健康への心配が大きくなったり、それまでの仕事や活動が続けられなくなるのではという生活全般への悩みも感じやすくなります。特にCKDから透析導入までの期間が短かった方は、導入前に病気そのものを理解する時間の余裕がなかったり、急に食事などの制限が始まりスムーズに順応できないことへのストレスも見られます。また、長く保存期を過ごしてきた方も、導入を遅らせるために厳しい食事管理をがんばってこられたため、いざ導入となると残念な気持ちから希望を失ってしまうことがあります。

 現在、私は全国腎臓病協議会が実施している無料電話相談で「こころの電話相談担当」をしており、毎回多くの患者さんからさまざまなお悩みをお聞きします。同じ病気や障害、境遇にある人同士のカウンセリングを「ピア(仲間)カウンセリング」と言いますが、私自身も血液透析をしていることから、より具体的なお悩みに触れることが多いように思います。

 透析導入の前では、前述のような透析を始めることへの不安と、導入の時期をできるだけ先に延ばしたいという声がほとんどです。そして透析を導入された後では、人間関係の相談が多くなります。特に血液透析の患者さんは、週に約3回、4時間以上を病院で過ごす方が多いため、決まった時間・場所・触れ合う人たちの中で、どうしても気がかりなことが増えてしまうのです。

大迫 薫さん

「電話相談では、はじめはその方の状況や思いを理解するために、お話に耳を傾けます。そして私自身も透析をしていると伝えると、患者同士、前置きやいろんな説明を一気に飛び越えて、スーッとわかり合える感じがします。それでも病状や環境は一人ひとり違うもの。苦しいこと、不安なことは自分だけで抱え込まず、心を開いて話すことができる相手に聞いてもらうだけでも気持ちが軽くなります」と大迫さん。そして、「どんな状況の自分も愛して認めてあげることも大切です」と語ります。

信頼する人に相談したり、気持ちを切り替えてみましょう

 悩みや不安を感じた時には、人と話すことが大きな支えになります。信頼できる人に少しだけ甘えて話を聞いてもらうだけで、自分の言葉を通して、自分自身も今の状況を客観的に見つめられたり、気持ちを整理できることがあります。遠慮したり、一人で我慢してため込まずに「聞いてくれる?」「相談してもいい?」と声をかけてみてください。話すことが苦手な方は、紙に書き出してみる方法もおすすめです。

 そして大切なのは、不安や問題だと思うことばかりに意識を集中させないことです。思い続けていると、それは心の中でどんどん大きく広がっていきます。人は何か出来事があった時、その人の癖でふと浮かぶ考えがあり、それがマイナスの考えであった場合に、「辛い」「悲しい」という感情が生まれます。この「ふと浮かぶ考え」は意識的に変えることができ、心がけていると習慣になります。すると、その後の感情も切り替えることができるのです。また、好きな人や趣味、かわいらしいペット、旅してみたい場所など、「楽しい」「うれしい」「心地良い」と感じるものに意識を向けるのも良いでしょう。

 もう一つ、私がおすすめしているのが「マインドフルネス瞑想」です。認知行動療法の一つで、近年ではさまざまな企業で心身の健康などを目的に取り入れられています。取り組む時は、「今この時の自分」に目を向けます。歩いている、食べているなど簡単なことで良いので、今自分がしていることに意識を向けてみてください。評価せず、捉われず、ただ今の状態だけをそのまま認識します。次第に自己への捉われ(マイナスの感情)が減り、気持ちが安定してきます。下の方法で継続してみてください。

自分に合った方法で、気持ちをリフレッシュしましょう

 透析治療に加え、現在は新型コロナウイルス感染症の流行で、外出控えから気分が晴れないという透析患者さんは多いと思います。感染予防のために身体的距離に注意しながらも、ぜひ「人と話して思いを聞いてもらう」「自分が楽しくうれしくなることを考える」「マインドフルネス瞑想に取り組んでみる」などで、気持ちをリフレッシュしてください。そして一緒に、透析生活をより良いものにしていきましょう。

1分間でできるマインドフルネス瞑想の実践法
大迫 薫さん

大迫 薫さん

メンタルカウンセリング「Oruka' room」代表
心理カウンセラー/産業カウンセラー
全国腎臓病協議会 無料電話相談 こころの電話相談担当

 

1963年、神奈川県横浜市生まれ。31歳の時に当時勤めていた会社の健康診断で、血尿を指摘される。33歳で糸球体腎炎により血液透析を導入。その後、透析中に読んだ本に大きな影響を受け、心理カウンセラーを目指す。40歳で大学に入学し、認定心理士の資格を取得。卒業後、産業カウンセラー養成講座を修了。現在は、産業カウンセラーとして企業で働く人たちの心をサポートしながら、女性限定で個人のカウンセリングも行う。また、全国腎臓病協議会の「無料電話相談」で患者さんやご家族の相談を受けている。