透析を受けながら活躍する人々
掲載:2022年 9月

会う人が思わずファンになる、長谷川さんのビッグスマイル!周りの方からは、「透析をしているように見えない」と言われるそうです。お店は、長谷川さんが自ら釣った新鮮な魚や、地元の旬の野菜・山菜などを使った料理に、全国から多くの人が訪れます。同じ透析患者さんの要望に合わせて、食材や味付けを工夫する、きめ細やかな心づかいも。
周囲のサポートで在宅透析を開始。
仕事や趣味を諦めずに、続けられるのがありがたいです。
料理店「吉乃や」店主
長谷川 一幸 さん
1971年、新潟県小千谷市生まれ。すぐに長岡市へ転居し、高校卒業は家業である料理店「吉乃や」で家族とともに働く。2009年に足のむくみや貧血などの体調不良を感じ、病院を受診するものの検査では異常なし。翌年の検査で、ANCA関連血管炎による急速進行性腎炎と診断され入院。1ヵ月半入院し、ステロイドパルス治療を受ける。退院後も治療を続けるが、1年後に血液透析を導入。2016年、在宅透析を導入。現在、お父様・妹さん・弟さんの奥様が介助者となり、自宅で週に4~5回・毎回4~5時間の透析を行っている。趣味は釣りで、自ら釣った魚がお店の料理で並ぶことも。旬のおいしい料理と長谷川さんの人柄に、全国からファンが集まる。
40歳の時、急速進行性腎炎で血液透析を導入。
医師や家族の支えで、在宅透析を開始。
新潟県長岡市で、魚料理を中心とした料理店を家族と営んでいます。高校卒業後に家業を継ぎました。
小さい頃から大病をすることもなく過ごしてきたのですが、急に体調の変化を感じたのは38歳の時です。足がむくみ、全身がだるくて息切れをするようになりました。貧血の症状もあり、病院で検査を受けたのですが、結果は異常なし。しばらく様子を見ることになりました。

医師から将来的に透析を導入するというお話があった際、長谷川さんは透析について知らなかったため、詳しく調べ始めたといいます。「病気や自分の状態を知るために、患者自身も受け身ではなく、勉強することが大切だと思います」と話します。
しかし翌年の検査で、尿のにごりや高血圧、クレアチニンの上昇が見られました。そのため腎臓内科で精密検査を受けたところ、医師から即入院を告げられました。診断は、「ANCA関連血管炎による急速進行性腎炎」。「ANCA関連血管炎」とは、ANCA(抗好中球細胞質抗体)と呼ばれる抗体が血液中にあらわれて、臓器の細い血管で炎症を起こす免疫の病気です。私の場合はこれによって腎糸球体に炎症が起きて、腎機能が急に低下して腎不全になったのです。初めて聞く病気の名前や、「急速進行性糸球体腎炎」が指定難病であるということに、最初はとにかく驚きました。わからないことが多く、不安でもありましたが、早急に治療を始めなければなりません。すぐにステロイドパルス治療を開始し、1ヵ月半後に退院してからも約1年間ステロイド治療を続けました。
この治療を受けながら、先生(医師)から透析を見据えたお話もありました。当時その病院では腹膜透析のサポートをしておらず、腎移植については私自身がまったく考えていませんでした。そのため血液透析を選択し、40歳の時にシャントを造設。手術から3ヵ月後に、血液透析を開始しました。透析を始めた当初はしんどい状態が続いていましたが、週に3日・5時間ずつの透析を続けるうちに、1ヵ月ほどで少しずつ体が軽くなっていきました。
食事制限に慣れ、体調や毎日の生活も落ち着いて5年ほど経った時、先生から「在宅透析をやってみませんか」というお話があったのです。通院していた病院としても初めての取り組みということでしたが、当時の患者さんの中でも私の年齢が若かったことや全身の状態が良かったことなどから声をかけてくださったようでした。私は、普段から先生やスタッフの皆さんと気軽にいろいろとお話しすることも多かったので、今思うと相談しやすいのもあったかもしれませんね(笑)。翌月から、在宅透析のためのトレーニングが始まりました。通院の際に、透析機器の回路の組み立てや穿刺を自分でできるよう、練習しながら覚えました。また同時に、家族も介助者としてのトレーニングを受けてくれました。こうして多くの方の協力とサポートのおかげで、半年後には在宅透析を始めることができるようになったのです。
今は週に4~5日・毎回4~5時間、自宅で透析をしています。月に1回通院しますが、それ以外は自分で透析をする日や時間を調整しています。ずっと体調が良いので、みなさんにもぜひおすすめしたいです。在宅透析を始めて良かったことは、何よりも時間を自由に使えることです。私は釣りが好きなのですが、透析があるとなかなか海へは行けません。でも、今の生活スタイルであれば、自分で工夫しながら治療も趣味も諦めなくて良いのです。仕事をしっかりできることも、ありがたいです。おかげさまでうちは昔から通ってくださる常連さんが多いんです。それから、同じ透析患者さんたちとSNSなどでつながっていて、店でオフ会などを開くこともあります。みなさんにおいしい料理を楽しんで喜んでもえるように、これからも長くがんばっていきたいです。