〈透析医療の現場から〉医療法人社団 岡村医院 腎クリニック

掲載:2018年 vol.33

〈透析医療の現場から〉医療法人社団 岡村医院 腎クリニック

お話を伺った先生

医療法人社団 岡村医院 腎クリニック

副院長

岡村基弘 先生

岡村医院は、1988(昭和63)年に開設。開設当時から「患者さん第一」の理念を大切に、患者さんの目線に立った透析治療に取り組む。2008(平成20)年に腎クリニックを開設。本院とともに、治療やコミュニケーションの細やかさはもちろん、透析をしていることを忘れさせるようなゆったりと落ち着いた空間も好評。送迎にも注力し、患者さんやご家族の安心感や信頼感も篤い。

患者さんとご家族、医療チームのコミュニケーションを重視。

 透析は、導入すると腎臓移植などを行う場合を除き、多くの患者さんが長く付き合っていく治療です。だからこそ、いつまでも心身ともに元気に過ごせるようにと願うのは患者さんはもちろん携わる医療者のみなさんも同じでしょう。

 京都府長岡京市で1988年に開設された岡村医院は、当初から「患者さん第一」をモットーに、より患者さんやご家族の方の目線に立った治療を大切にしてきました。何より心がけているのは“コミュニケーション”と話すのは、腎クリニック副院長の岡村基弘先生です。「患者さんやご家族、また医師やスタッフなど医療チームの間で情報を共有したり話しやすい関係を築くことで、みんなで患者さんをサポートしていきたいと考えています」。例えば外来診察がある日以外は、できるだけ岡村先生が患者さんの穿刺を行い、言葉を交わすことで体調に変化がないか確認しています。また、230人の患者さんのうち約150人の方を専属のドライバーが自宅まで送迎。「専属のドライバーにこだわっているのは、一言で表すと“患者さんへの思い”です。患者さんに何か変化があった時、ドライバーが当院のスタッフであれば、情報を院内で共有しやすいと思うのです。送迎中の患者さんの様子から、足が弱ってきていたり体調が良くなさそうといった様子が見受けられれば、すぐに対応することができます」と岡村先生。こうした手厚いケアは、患者さんはもちろんご家族の安心にもつながっています。

オンラインHDFや電解水透析、オーバーナイト透析など、先端の透析を採用。

 「患者さんにとって良い透析」を常に追求し、岡村医院ではオンラインHDFを積極的に取り入れています。「血液中の毒素をしっかりと除去するために採用しました。現在は腎クリニックの全65床のうち61床で行っていて、患者さんの体調も良さそうだと実感しています」と岡村先生。ただし低栄養の患者さんには、この透析方法は適していないと話します。「ご高齢の方の中には、食が細くなり十分召し上がることができず、栄養不足になる方がいらっしゃいます。その場合、オンラインHDFを行うと体に必要なたんぱく質なども除去されてしまい、ますます栄養不足になってしまうので、そうした患者さんは通常の血液透析を行っています」。

 そして、今年は西日本で初めて「電解水透析」を採用。電解水透析とは、水の電気分解によって生成される「電解水」が生体内で酸化ストレスを抑える役割がある点に注目し透析に応用した新しい方法です。最新の研究では、この電解水透析によって心脳血管病合併症の発症リスクが通常の透析と比べて41%抑制され、副作用も見られなかったという発表もあります(「Scientific report 2018」より)。透析患者さんは、心臓や血管、骨に関係する合併症が起こりやすく、透析における血液の酸化ストレスと炎症がその一因だと考えられていますが、こうした合併症を抑える方法の一つとして、現在注目されているのです。透析を行っていく中で「合併症の予防」を大きな目標としている岡村医院では、患者さんの治療や予後に適した透析であると考え取り入れたといいます。

 「患者さん第一」の透析は、それだけではありません。昨年8月から京都府で初めてオーバーナイト透析を開始しました。「患者さんのさまざまなニーズに応えたいと思い、オーバーナイト透析をされている他院へ見学にうかがったのです。その時、患者さんがとても生き生きと会話をなさる様子を見て、当院でもぜひ採用したいと考えました」と岡村先生。オーバーナイト透析は、睡眠中に透析を行いますが、慣れるまではなかなか寝付けない方も多いといいます。そこで少しでもリラックスして眠れる環境を整えるため、個室を設置。広いベッドや、風が直接体に当たらない空調も取り入れ、快適さにこだわりました。病院ということを忘れさせるホテルのような空間で、週に3回、8時間から10時間かけて、ゆっくりと透析を行います。最近では「意欲が出てきた」「以前よりも体が動くようになってきた」という患者さんのうれしい声も聞かれるそうです。

庭園

四季折々の草花が目を楽しませてくれる庭園。テラスもあり、春には美しい桜を眺めてお花見もできる。

2019年 vol.37 掲載
玄関ホール

広々とした空間が広がる玄関ホール。車いすを利用する患者さんも安心して移動できる。窓の外には庭園がのぞめる。

2019年 vol.37 掲載
休憩室

患者さんやご家族の方がくつろげるスペース。透析後の食事を食べたり、他にも講演会やイベントなども行われている。

2019年 vol.37 掲載
透析だけでなく、日常生活もきめ細やかにサポート。 地域でなくてはならない病院へ。

 岡村医院では、他にもシャントのケアや専門医による診察、栄養指導に力を入れ、運動も奨めています。

 新たにシャントを作ったりトラブルが起こった際のケア、血管拡張などは、本院の腎・泌尿器科クリニックに手術室や入院設備をそなえ、手術や緊急入院はもちろん、腎クリニックとの連携でその後のケアまで一貫して行っています。また、透析患者さんの合併症である視力低下や心機能低下をできるだけ早期に発見する目的で、眼科専門医・循環器専門医による定期的検査も実施しています。

 食事の栄養管理についても、専属の管理栄養士がきめ細やかに指導。食事の量や、配慮が必要な栄養成分、低栄養への対策など、患者さんの相談にも応えます。「日常生活で栄養管理はとても大切。しかし制限しすぎてしまうと、ストレスにつながってしまいます。食事は毎日のことなので無理をせず、食べ過ぎた時などは透析時間を長くすることで解消できればと考えています。当院では今春、透析室を拡張して床数が増えたので、患者さんの状態に合わせて柔軟に対応できるようになりました」。

 そして体に負担をかけずに体力を維持するという目的で、透析中にベッドの上でできるような軽い運動も推奨。自転車のペダルを漕ぐような運動器具を使用したり、トレーナーに相談しておすすめの運動方法を紹介してもらうこともあるそうです。実践している患者さんがいると、他の患者さんも興味を持って取り組むようになり、筋力アップなど良い結果が見られるとますます意欲が出ます。

岡村基弘 先生

岡村医院が建つ長岡京市には透析施設が少なく、通院に困る方も多いそう。「地域の患者さんに寄り添って、どんな時も頼りにされるようになりたい」と岡村先生。

 岡村先生は語ります。「これまでの“患者さん第一”という理念はこれからももちろん変わりません。今後は、そうした考えをさらに積極的に形にできるような取り組みをしていきたいです。最新の情報へのアプローチや地域との連携、患者会のサポートなど、まだまだできることはあります。患者さんに頼られる、地域になくてはならない病院になりたい。そして京都だけでなく、多くの患者さんに貢献していきたいと考えています」。

「患者さん第一」を大切にした、ぬくもりに満ちた医療環境。
透析室
透析室(個室)
本院である腎・泌尿器科クリニックの透析室。
お問い合わせ
医療法人社団 岡村医院腎クリニック

〒617-0813
京都府長岡京市井ノ内白海道8

TEL 075-958-6823

http://www.okamuraiin.jp

【透析治療】通院透析

[本院のご紹介]

腎・泌尿器科クリニック

〒617-0814
京都府長岡京市今里畔町24-8

TEL 075-957-1715

【一般外来】泌尿器科・腎臓内科・血液透析内科・ED治療
【透析治療】入院透析・緊急透析・オーバーナイト透析

特定医療法人 桃仁会病院

こちらもご覧ください