透析を受けながら活躍する人々

掲載:2021年 vol.41

金田 美穂さん

透析をしている仲間と、これまでハワイ旅行にも出かけたという金田さん。
「一人ではできないと思っても、誰かが誘ってくれて背中を押してくれたら、思い切って行けるでしょう。本当に楽しかった! 良い思い出です」。最近はコロナウイルス感染症の流行で外出は難しいけれど、本来は映画や美術館も大好きで「日常の中で、少しだけ非日常に触れて気分を高めるんです」。
ソーシャルアロマセラピストの資格も取得し、介護施設などでマッサージをしながらお話を聞く取り組みも。マッサージで交感神経が刺激されて、会話が弾むそう。

司会業、皮革工芸、腎友会活動など、前向きに楽しむ毎日。
透析患者さんには「一人で悩まないで」と伝えたいです。

金田 美穂 さん

司会業
特定非営利活動法人 兵庫県腎友会 理事
女性委員長・西播ブロック長

1969年、兵庫県姫路市生まれ。短大卒業後、姫路のイベント会社で1年勤務。司会業に携わりたいという長年の思いから、アナウンスについて学ぶ養成所に入所。卒業後は系列事務所に所属。24歳で結婚、25歳で息子さんを出産。一方、金田さんは小学5年生で急性腎不全、中学1年生でIgA腎症と診断される。ネフローゼ症候群を患い、32歳の時に風邪をきっかけに血液透析を導入。現在は週3回4.5時間の透析を受けている。本業の司会業に加え、兵庫県腎友会の活動や、最近では地元姫路の皮革工芸、ソーシャルアロマセラピストの活動も行うなど、さまざまなことに興味を持ち、新たな挑戦を続けている。

小学5年生で急性腎不全に。自覚症状もなく、学業・仕事にまい進。

 透析を始めて今年でちょうど20年になります。最初に腎臓に症状が出たのは小学5年生の時でした。私は子どもの頃から体が小さくて、何でも同級生と同じようにできるようになりたいと、少し負けず嫌いなところがありました。当時もスポーツテストで友達に負けないようにと練習しすぎて風邪をひき、そこから急性腎不全を起こしてしまったのです。1週間ほど入院した後は体調を崩すこともなく、中学1年生で腎生検を受けた際にもIgA腎症と診断されましたが、腎臓病の恐ろしいところで自覚症状がなかったために、日常生活で特に注意することもなく過ごしていました。

 地元の高校・神戸の短大を卒業した後は、地元のイベント会社に就職。しかし、もともと司会の仕事に関わりたかった私は、アナウンス技術などを学ぶために一念発起して大阪の養成所に入所しました。そして卒業後は、この学校が経営していた事務所に所属し、イベント司会やテレビ・ラジオのリポーター、有線放送のDJ、ゲームキャラクターの声優、CMナレーションなどの仕事をしました。

金田 美穂さん

姫路駅前で開催されたイベントで、司会を務める金田さん。ハリのある美しい声と、主催者との楽しい掛け合いに、観覧者の注目が集まる。また、この日選んだスカーフは、息子さんからのプレゼント。「コロナ禍とはいえ、就職して東京にいる息子が結婚して家族が増えたことも元気の源になっています」と金田さん。

 24歳で結婚することになり、妊娠や出産が腎臓に負担をかけるからと検診を受けました。ここでも深刻な問題は見つからなかったため、特別な治療や食事制限をすることもありませんでした。しかし、妊娠3ヶ月目で妊娠中毒症(妊娠高血圧症候群)の症状が強く出て、5ヶ月目から出産まで入院。出産は9ヶ月と1週間で少し早期でしたが、帝王切開によって8分間で息子が誕生し、退院後も周囲のみんなが支えてくれたおかげで、心身ともに大きな負担もなく過ごすことができました。仕事にも早く復帰し、28歳の時離婚を機に息子を連れて地元の姫路へ戻りましたが、司会や家業の手伝い、専門学校の非常勤講師を続けていました。

 子どもが幼稚園の年長クラスになる頃、私は夜に寝付けず、よく氷を食べるようになりました。いつも体調が悪く「病院に行こう」と思いながらも、心のどこかで「今入院だと言われたら、卒園式に出られない」と我慢していました。卒園式が終わり、そのまますぐに病院へ行くとネフローゼ症候群と診断され、「もともと急性の状態だったのが、慢性になっている」と医師に言われました。その年、10月に風邪をひいたのをきっかけに、時期はまだ早かったのですが血液透析を導入。シャントはすでに作っていて、最初の透析日、私の妹が気丈に付き添ってくれました。初めて腕に針が刺された時、「ああ、この瞬間から、私は一生透析を続けるんだなぁ」と涙がこぼれました。それまでは、いつも「大丈夫」と前向きに捉えてきましたが、この時は言いようもなく辛くて悲しい思いがあふれました。

 今は週に3回、4.5時間の透析をしています。お世話になっている病院は、「透析患者さんも社会と関わることが大事」という方針で、そのため私の仕事についても理解してくださいます。食事も、注意しつつあまり厳密に制限して辛くならないように接してくださるので、前向きに治療を受けられています。家族、友人、仕事のつながり、病院のみなさんなど、たくさんの方に支えてもらって今を生きていることに心から感謝しています。

 最近はコロナウイルス感染症の流行で、本来の司会業の仕事が少なくなったので、数年前から取り組んでいる革工芸に力を入れるようになりました。また兵庫県腎友会の活動にも参加していて、周りの方といろんな話をしたり助け合う中で、心強さを感じる日々です。同じ透析患者さんにも、「一人で悩まないで」と声をかけたいですね。今まで、たくさんの人に支えてもらい歩んできました。少しずつ恩返しをしながら、これからも変わらず前向きに、日々を楽しみながら過ごしていきたいです。

姫路レザー La storia(ラ・ストーリア)

姫路レザー La storia(ラ・ストーリア)

最近は姫路の伝統工芸である革の小物づくりにも取り組んでいる金田さん。「姫路の皮革工芸はとても歴史があって世界でも評価が高いんです」と語る言葉から、地元への愛が伝わる。パートナーの一丞しゅんさんと一緒に、今のファッションやライフスタイルにもぴったりのモダンな作品も生み出している。
https://lastoria-himejileather.com/