
広々とした駐車場も完備する、宇都宮 腎・内科・皮膚科クリニック。昨年増設をして病床数が増えた。
掲載:2019年 vol.35

お話を伺った先生
宇都宮 腎・内科・皮膚科クリニック
院長
中野 信行 先生
2004年、獨協医科大学 医学部 医学科卒業。2006年から獨協医科大学 循環器内科、聖マリアンナ医科大学 腎臓・高血圧内科などを経て、2015年に「宇都宮 腎・内科・皮膚科クリニック」を開設。医学博士・日本内科学会認定 内科認定医・日本腎臓学会認定 腎臓専門医・日本透析医学会認定 透析専門医。
幅広い透析をはじめ、生活習慣病やCKDの治療、腎臓移植もサポート。
近年、慢性腎臓病の治療において腎代替療法の技術や考え方が大きく進歩してきました。患者さんも自身のライフスタイルに合わせて治療方法を検討・選択することができるようになり、QOL(Quality of life=生活の質)のさらなる向上へとつながっています。
栃木県宇都宮市の「宇都宮 腎・内科・皮膚科クリニック」では、まさに“一人ひとりの患者さんに寄り添う”診療が行われています。院長の中野信行先生は、「現在当院では85名の透析患者さんを診療しています。血液透析の方が中心ですが、腹膜透析やオンラインHDF(血液ろ過透析)、さらに昨年からは在宅血液透析も行っています。この4種類の透析をすべて行っている施設は、栃木県内でも多くはありません」と話します。
当院の内科では高血圧や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病のケアにも注力しており、腎臓内科では内科と連携しながらCKD(慢性腎臓病)の治療に注力しています。「以前は、慢性腎臓病の患者さんは保存期の治療を十分に受けることがなく、透析治療を始められる方が多く見られました。しかし、適切なケアによって保存期をできるだけ継続させることも可能です。また生活習慣病の予防の段階から患者さんに携わり、指導をしています」。
そして、透析を導入する際には、透析そのものの説明や必要性はもちろん、治療の選択肢についても患者さんやそのご家族に丁寧に話し、納得される方法で進めています。これまでは、「透析といえば血液透析」と、他の治療方法を知らない方も多かったと言いますが、現在の腎代替療法は実に幅広くなっています。中野先生は、患者さんのライフスタイルに合った方法を探り、選択を後押ししています。「例えば血液透析は、一般的に週3日、4時間以上行います。通院時間なども考えると、多くの時間を透析に費やすことになるのです。そのため、これまでの職場を辞めたり、仕事内容を変えざるをえなくなる方もいらっしゃいました。しかし現在は、治療の選択によって、生活への影響を少なくすることができます」。中野先生は腹膜透析の実績があり、また昼間に働く患者さんのために、夜間のオンラインHDFを採用。さらに昨年11月からは在宅血液透析も開始しました。在宅血液透析は、患者さんからの希望があれば介助者の理解やサポート、機器などの購入を経て移行することができます。定期的な通院は必要ですが、その回数や時間は大幅に削減でき、自宅で好きな時間に透析ができる自由度の高さがメリットです。

ゆったりとした処置室。臨床現場即時検査(POCT)を採用した最新の検査・治療機器が並ぶ。

明るく清潔感があふれる透析室。スタッフのみなさんが、てきぱきと透析の準備を進めていく。
皮膚科と連携し、フットケアを実施。 専門資格を持つスタッフが患者さんの心身をサポート。
当院の大きな特徴の一つは、皮膚科が設置されていることです。透析患者さんのQOLにもっとも影響を及ぼす原因はスキントラブルだと言われています。特に透析患者さんは、水分摂取量の制限によって皮膚の水分量が少なくなり、下肢からかゆみを感じやすくなります。また、動脈硬化の進行により足の血行不良が起こると、しびれや痛みがあらわれます。こうした足に関わる病気やトラブルを防止・治療する「フットケア」に、当院では皮膚科専門医と一緒に取り組んでいます。全国的にみても皮膚科が常に透析医療と併診できる施設は大変珍しく、他院からの紹介で訪れる患者さんも多いと言います。
また、栄養指導や運動療法も積極的に取り入れています。管理栄養士の監修のもと、看護師が患者さんに栄養評価を実施。運動面では、ペダルの運動器具を用いて太ももを上げる「もも上げ運動」などを推奨し、近年増えつつあるサルコペニア(筋肉量・身体機能の低下)やフレイル(生活機能全般の低下)の予防にもつなげています。
こうして、透析治療だけでなく患者さんの自己管理をサポートする上でも欠かせないのが、当院のスペシャリストたちの活躍です。
看護師の橿渕(かしぶち)八重さんは、「慢性腎臓病療養指導看護師・腎臓病療養指導士・CAPD認定看護師」の資格を持ち、保存期から透析期のすべてのステージにおける経験豊富な看護実績があります。「主に採血や栄養の評価、カテーテルの出口部の清潔管理・指導を行っています。慢性腎臓病は、長く付き合っていく病気です。患者さんの治療へのモチベーションが続くよう、身体面だけでなく精神面でのサポートも心がけています。具体的には、検査結果が良くない時は、注意するだけでなく原因を一緒に見つけて解消するようにしています。たくさんコミュニケーションを取って信頼関係を築き、安心して治療を受けていただけるような環境を作りたいと思っています」と橿渕さんは話します。

患者さんがリラックスできるように、やさしく話しかけるようにしているという橿渕さん。「患者さんが“ここに来るとホッとする”と言ってくださった時は、本当にうれしかったです」。

「患者さんが透析を終えて、元気に帰っていかれる時に、よかったなと思います」と大瀧さん。透析中は、スポーツなどいろんな話題で患者さんとコミュニケーションを図っている。
さらに臨床工学技士の大瀧陽二さんは、透析技術認定士の資格を取得。透析に関する専門知識を持ち、透析機器の管理をはじめ、穿刺や透析効率の評価・管理などを行っています。「患者さんに説明する時はゆっくり丁寧に話すようにしています。私たちは、患者さんが安心してスムーズに治療を終えられることが大切。昨年からは在宅血液透析を始めた方もいらっしゃいますが、こうしたご希望も含め、力になりたいと思っています」と大瀧さん。腎臓病や透析に関する知識や技術を持つ多彩な専門家が、質の高い治療を叶えています。
「地域連携」と、「コンパクトなチーム医療」で患者さんの包括的ケアを目指す。
中野先生は大学病院での外来診療を併診し、病診連携・診診連携にも積極的に取り組んでいます。また院内でもこうして多職種の医療者の専門性を集結し、きめ細やかなケアを目指しています。「近年の医療は高度化・細分化され、専門的な治療は大きな施設で行われることが多い傾向にあります。こうした大施設と地域の施設間での連携は大変重要です。一方で、患者さんをより身近でケアするためには、コンパクトで緊密なチーム医療が不可欠です。地域という大きな枠組みと、日常的に診療を行う施設でのコンパクトな枠組みの両方で、それぞれ包括的な医療やサポートを提供していくことが大切だと考えています。私のモットーは“木を見て、森を見て、山も見る”。患者さんのすべてを抱えるつもりで、これからも心と体に寄り添う医療を目指していきたいです。それが私たちの使命でもあると思います」と、中野先生は今後の抱負と意気込みを語ってくださいました。

定期的に健診や家族面談を行っている当施設。「さらに血液透析の患者さんには、血管のエコー検査や、必要に応じて狭窄時の血管拡張術を行っています」と中野先生。

診療までの時間をリラックスして過ごせる、落ち着いた雰囲気の受付・待合スペース。
お問い合わせ
宇都宮
腎・内科・皮膚科クリニック
【診療科】内科・腎臓内科(透析センター)・循環器内科・皮膚科

院長の中野信行先生、副院長の中野敦子先生を中心に、看護師、臨床工学技士のみなさん。