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透析医療の現場から 医療法人創和会 しげい病院

掲載:2022年 vol.42

有元 克彦先生

お話を伺った先生

医療法人創和会 しげい病院

院長

有元 克彦 先生

1982年、岐阜大学医学部卒業。同大学医学部小児科、国立岡山病院小児医療センターなどを経て、1989年から重井医学研究所附属病院内科に勤務。2019年、しげい病院院長に就任。日本腎臓学会 腎臓専門医、日本腎臓学会 指導医、日本小児科学会 小児科専門医。

質の高い透析と先進的なリハビリを提供し、患者さんのQOLの維持・向上を目指す。

 透析機器の進歩や新しい治療薬の登場で、透析患者さんは長生きできるようになってきました。しかし高齢化や透析の長期化、特にCKD-MBDなどの合併症により、QOL(生活の質)を損なうなど新たな問題もあらわれてきています。

 岡山県倉敷市のしげい病院は長い透析治療の歴史を持ち、早くから透析患者さんの「回復期リハビリテーション」に力を入れてきました。これは脳卒中などの脳血管疾患や大腿骨頚部骨折などで急性期の治療を受けた患者さんが、歩行など基本的な動作をはじめ入浴などの日常的な動作ができるようリハビリを行い、家庭生活への復帰をサポートするものです。しげい病院では、2001年に「回復期リハビリテーション病棟」を開設。院長の有元克彦先生は「以前は重い合併症から長期入院透析になる方がたくさんいらっしゃいました。急性期の入院治療中に身体機能が低下し、自宅での生活や透析通院が難しくなるためです。合併症の治療が終わっても、身の回りのことや通院が自立しない状態で退院すると、患者さんはもちろんご家族の負担が増えてしまいます。回復期リハビリ病棟では、入院前と同じような日常生活が過ごせるよう、QOLの維持・向上を第一に多職種のチームでリハビリに取り組んでいます」と話します。透析治療の進歩、特に腎性貧血治療の進歩で透析患者さんがリハビリに取り組める体力がついてきたこと、また介護保険による介護タクシーなど多様なサービスの提供で、透析患者さんの通院など在宅生活を支援できる体制ができてきたことも、リハビリの成果につながっているといいます。「実はこの透析患者さんの回復期リハビリは、まだあまり知られていないのです。急性期の病院から引き受けた透析患者さんを通い慣れた地元の透析施設に元気にお返しすることが当院の使命だと考えています。透析治療と専門的な回復期リハビリを同時に受けられる施設は岡山県内では当院のみですが、今後さらに広まっていけばいいですね」と有元先生は期待を寄せます。

※CKD-MBD:慢性腎臓病(CKD)にともなうカルシウム・リン・副甲状腺ホルモンの異常により引き起こされる、骨・ミネラル代謝異常。血管の石灰化による脳卒中・心筋梗塞などの心血管系合併症や、骨折による寝たきり状態を引き起こす。

多職種のスペシャリストが一人ひとりに合わせたリハビリをサポート。
ウェルウォーク

しげい病院で導入している「ウェルウォーク」。運動学習をサポートする機具で、体に負担をかけずに、片麻痺患者さんの歩行リハビリを行うことができます。

 しげい病院の回復期リハビリテーション病棟の大きな特徴は、充実したチーム医療です。医師・看護師・介護士・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・薬剤師・管理栄養士・医療ソーシャルワーカーなど幅広い職種のプロフェッショナルが、一人ひとりの患者さんに合ったテーラーメイドのプログラムを作成。これに基づいて、実生活での自立を目指したリハビリを行っていきます。

 「一番の目標は“自宅や社会へ戻ってからの生活を、少しでも元の状態に近づけること”。そのために最新の器具を用い、最長で一日3時間のリハビリを行い、日常的な動作ができるよう練習します。例えば食事や着替え、歯磨きや排せつ、身だしなみを整えるといった起床時から就寝時までの生活そのものの動作で、入院中は24時間サポートを行っています」と有元先生。そして買物などの外出訓練や、退院前には患者さんの自宅を訪問し、段差などに合わせて強化したい訓練を見極めたり、自宅の改修・補助器具の導入が必要か確認したりするなど、安心して退院できるようきめ細かくフォローします。

 病気によっても異なりますが、入院は最長180日までと決められています。しかし、この期間での回復が難しいこともあります。そんなとき退院後のリハビリが必要になります。当院では、こうした要望に応えて「通所リハビリ」や「訪問リハビリ」を利用して個々の患者さんの状態や生活環境に合わせたリハビリを提供しています。訪問リハビリでは、自宅を訪問して生活の様子を確認し、必要に応じて玄関の出入りや車の乗り降りができるように段差昇降の練習をしたり、自宅の台所で実際に調理や洗い物の訓練をしたりします。また、退院後の介護保険申請のお手伝いやさまざまなサービスの調整など、在宅復帰に向けて手厚いサポートを行っています。

栄養管理と運動習慣で身体機能の低下を予防。

 透析患者さんのリハビリについて有元先生は、社会生活への復帰と同時に、「骨折を防ぐ重要性」を挙げます。「骨折を防ぐには、転倒しないように筋力を付けること、栄養状態を良好に保つことが大切です。透析患者さんの高齢化が進む中、サルコペニアやフレイルを防ぐためにも重要なポイントです」と語ります。そして透析を導入する前の慢性腎臓病(CKD)保存期から「腎臓リハビリテーション」に取り組んでおくのが良いといいます。回復期リハビリテーションが「合併症など病気の治療からの回復をサポートする」のに対し、腎臓リハビリテーションでは「身体機能の維持向上」を目的に運動習慣を身に付けます。当院では、透析導入前からこうした指導を行い、QOLの向上に成果を上げています。

 長年にわたり、透析治療のみならず合併症治療から継続した患者さんのリハビリにも積極的に取り組んできた当院には、地元・倉敷をはじめ、地域から厚い信頼と期待が寄せられています。「岡山県では透析医療に関わっている施設はすべて岡山県医師会透析医部会に加盟し、普段から密な連携を図っています。1995年の阪神・淡路大震災の時、透析を受けられない患者さんが多発したことで、災害時における地元医療機関同士のつながりの重要性を感じたことがきっかけです。この連携は、新型コロナウイルスの感染症対策においても大変役立っています」と有元先生。今後の目標について、「これからますます透析患者さんのリハビリは重要になってきます。私たちも最新の知識や技術・機器を取り入れながら、地域に根差し全員でより良い医療を届けていきたいと考えています。チーム医療では患者さんもチームの一員です。より元気で充実した透析生活、そして人生を目指して、一緒に歩んでいきましょう」と語ってくださいました。

有元先生

「今後は心疾患に関連した心臓リハビリテーションの重要性も高まっていくはず」と話す有元先生。「地域包括ケア病棟の開設も検討しています。これからも引き続き、患者さんにより質の高いリハビリをお届けしていきたいです」。

チーム医療で透析患者さんのリハビリテーションをサポートするスペシャリストの声
患者さんのお気持ちを大切にし、将来の希望を叶えられるようサポート。

 私たちは、透析患者さんが住み慣れた地域で元気に暮らし、安心して透析に通っていただけることを目指しています。そのためには質の高い治療に加えて栄養と運動習慣が大切だと考えています。
 透析患者さんは透析で横になっている時間が長く、最近は新型コロナウイルス感染症の流行でさらに運動する時間が短くなっています。少しでも運動習慣を身に付けていただけるよう、足踏み運動をはじめ、スタッフが作成した動画をベッドに備え付けのモニターに映すなどして、それぞれの体力や生活に合わせた運動を提案し、体を動かす機会を増やしています。またリハビリと透析の時間帯を工夫して、できるだけ毎日リハビリをしてその成果を実感できるようにすることで、患者さんが「続けられる、続けたい」とモチベーションを高められるように取り組んでいます。
 私たちは患者さんご自身の「こうなりたい、将来このように生活したい」というお気持ちを大切にしたいと考えています。食事など普段の生活スタイルをよくお聞きして、患者さんのご希望をできるだけ叶えられるようサポートしています。

松田 佳子さん

血液浄化療法センター/副看護部長
松田 佳子さん

透析室

透析室

患者さんが持つ力を信じ、多職種の専門スタッフが手厚くケア。
籾木 かよ子さん

看護部 課長
籾木 かよ子さん

 回復期リハビリテーション病棟では、退院・在宅療養に向けて、脳血管疾患などさまざまな病気の患者さんのリハビリを行っています。多職種の専門スタッフが携わり、患者さんが基本動作や日常的な動作ができるようになって、安心して退院していただけるように取り組んでいます。幅広い知識や経験を持った専門スタッフがいることで、看護だけでなくさまざまな視点で患者さんをフルサポートできるのが回復期リハビリ病棟チーム医療の良い点ですね。
 リハビリでは、「患者さんの力を信じて、希望の生活に近づける」ことを大切にしています。患者さん一人ひとりの能力を、できる限り引き出せるようにしています。
 また、患者さんやご家族のご希望も重要です。例えばご家庭での介護の心配がある場合も、ご相談しながらできるだけご希望に合わせた退院支援を行っていきます。マンツーマンのリハビリ時や、食事・入浴の時など、何気ない会話から患者さんの要望がわかることも多く、退院後の生活の質がより良くなるよう丁寧に会話を重ねるように心がけています。

機器のメンテナンスを第一に、常に新しい情報を取り入れ、患者さんに届けたい。

 私は臨床工学技士で、生命維持管理装置の保守管理がメインの仕事ですが、今はリハビリの現場で患者さんと触れ合う機会が増え、新たなやりがいを感じています。
 例えば透析患者さんのボール運動のサポートです。また元来リハビリに使われるEMS(低周波の電気刺激療法)ですが、シャントの閉塞を防ぐ効果があるとの学会報告を聞いて興味を持ち、取り組んでいます。治療効果がはっきりあらわれれば、患者さんにも喜んでいただけると思います。
 血液浄化療法センターでは、患者さんお1人に対して看護師1名・技士1名が担当していますが、その他にも多くのスタッフが職種を超えて協力し合い連携しています。まさにこれこそがチーム医療であり、当院の魅力だと感じています。
 今後も機器の日々のメンテナンスを大切に、常に新しい治療方法などの情報も取り入れたいと考えています。ありがたいことに新しい情報は院内ですぐに検討し良いものは採用される環境なので、患者さんには常に最新の治療をお届けしていきたいです。そしてリハビリの現場でも、困ったことがあれば何でも気軽に声をかけてほしいと思います。

小野 太士さん

臨床工学部・技士長
小野 太士さん

■ 透析患者さんのリハビリテーション

西濱 基本的に患者さんのリハビリは疾患別に行いますが、透析患者さんの場合、透析時間の確保や食事面に注意しながら進めています。血圧が安定している状態で、午前中に理学療法・作業療法・言語聴覚療法など、透析のない患者さんとなるべく同じ量のリハビリを行っていただき、午後にしっかり透析ができるようにしています。

井本 腎臓リハビリは有酸素運動とレジスタンストレーニングが基本ですが、回復期リハビリテーション病棟の特徴は、生活に即した日常生活動作の訓練です。調理や入浴、排せつなど実際の自宅での動作ができるように、患者さんごとにプログラムを組みます。

清水 透析患者さんは通院の必要があるため、車の乗り降りがスムーズにできるかも確認して、必要であれば乗降のトレーニングを行います。また、ご自分で運転されていた方は、退院後に自動車運転が継続できるかの評価もします。

西濱 美絵さん

リハビリテーション部・室長 作業療法士
西濱 美絵さん

リハビリテーション部・主任 理学療法士
井本 洋史さん

井本 洋史さん
清水 賢児さん

リハビリテーション部・副主任 理学療法士
清水 賢児さん

■ 患者さんのサポートにおいて心がけていること

井本 透析患者さんの高齢化が進んでいる中、腎臓だけでなく合併症もしっかりと評価して、お一人ずつに合ったリハビリを提案したいです。当院は、外来透析の患者さんにも年に1回運動の能力評価を行っています。サルコペニアやフレイルを防ぐ意味でも有用で、少しでも患者さんのQOLを維持・向上できればと思います。

清水 治療のことはもちろん、趣味のことなど、何でも気軽に話してもらえるようにしています。貴重な意見をいただいて新たな気付きや学びにつながることも多いです。会話を深めて、心配ごとなどがあれば何でも相談しやすい関係を目指しています。

西濱 透析は、どうしても拘束時間や食事などの制限が多くなります。また長期にわたる治療のため、患者さんの体の状態や生活環境、お気持ちを想像して寄り添えるように心がけています。長年透析されている方からは、以前の透析方法など教えていただくことも多いです。

リハビリテーションセンター

リハビリテーションセンター

■ 今後の目標

清水 現在行っている動画を用いた運動療法に引き続き注力していきたいです。また、患者さんの状態や目標に合わせて、当院独自の運動の評価基準やメニューを新たに作りたいと考えています。

西濱 私たち作業療法士や理学療法士が運動の指導をするのはもちろん、電気治療やマシーントレーニングなども上手に取り入れながら、できるだけ多くの患者さんに良いリハビリをご提供できればと思っています。入院期間が180日と限られてしまう中、その期間に少しでも身体機能を回復して、日常生活に戻れるよう、さまざまな方法でお手伝いしていきたいです。

井本 当法人には重井医学研究所もあり、岡山県下でも最多の透析患者さんを受け入れています。今後も腎臓リハビリテーションや回復期リハビリテーションに力を入れ、当院が先頭に立って腎臓・透析患者さんのリハビリを盛り上げていきたいと考えています。

患者さんやご家族の希望に合わせて、必要な支援やサービスをコーディネート。
南 俊也さん

地域連携・入退院支援室・主任
医療ソーシャルワーカー
南 俊也さん

 私は現在、主に入院患者さんの退院支援を行っています。回復期リハビリテーション病棟の患者さんは、リハビリをしながら少しずつ身体能力が上がっていきます。目標の状態に合わせて、退院後に自宅へお帰りになる場合は介護保険などのサービスの手続きを行い、施設への入所や転院が必要であればその調整を行います。
 さまざまな支援やサービスは、基本的に患者さんやご家族のご希望に合わせてコーディネートしていきます。ご当人のお話をしっかり聞きつつ、また一方で医療チーム内でも意見交換をしながら客観的に必要だと思われるサポートを提案する場合もあります。
 透析患者さんの場合、通院手段の確保は重要なポイントです。ご家族の送迎や介護タクシーでの通院、施設に入所される場合はその施設から送迎が可能か確認します。
 さまざまな条件がある中で、患者さんやご家族の希望が叶うような支援ができると「期待に応えられて良かった」と感じます。これからも、みなさんに「しげい病院に来て良かった」と思っていただけるよう、精一杯取り組んでいきたいです。

お問い合わせ
医療法人創和会 しげい病院

〒710-0051
岡山県倉敷市幸町2-30

TEL 086-422-3655(代表)

https://shigei.jp/

【診療科】 内科、循環器内科、消化器内科、呼吸器内科、神経内科、糖尿病内科、腎臓内科、人工透析内科、放射線科、外科、整形外科、脳神経外科、心臓血管外科、リハビリテーション科、泌尿器科、皮膚科/血液浄化療法センター/リハビリテーションセンター

医療法人創和会 しげい病院

有元先生を中心に、腎臓病患者さん・透析患者さんのリハビリに携わるスタッフのみなさん。チーム医療で、患者さんを力強くサポートします。

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