
「透析とは何?」「どんな治療をするの?」「普段注意が必要なことは?」。
透析患者さんやこれから透析を始める方は、さまざまな疑問や不安を感じることがあるでしょう。
そこでより良い透析生活を支えるために、治療や気を付けたい症状、食事、運動など、透析に関する知識をドクターに学びます。
透析当日の過ごし方
南海医療センター 泌尿器科 透析センター長
平田 裕二 先生
透析日の体は、通院前後で大きく変わります。
透析日をより安全に過ごすために、透析前後のご自宅での過ごし方について平田裕二先生に教えていただきました。

通院前の準備
― 透析に行く前に準備しておくことを教えてください。
透析治療は、患者さんご自身の自己管理がとても大切です。透析日以外も含めて、毎日血圧・体重・体温測定を行うことを習慣にしてください。測定結果は透析手帳などに記入し、通院のたびにスタッフに見せて情報を共有しましょう。
熱や吐き気があったり、下痢をしているなどいつもと体調が異なる日は、透析施設に向かう前に必ず電話連絡をしてください。もし、インフルエンザやノロウイルスなどに感染している場合、他の患者さんと同室で透析を行うと、集団感染を招く恐れがあります。多くの施設には感染症の患者さん専用の透析室があります。一旦そこで医師が診察して、感染症かどうかを判断します。施設によっては、通常とは別の入り口から入ってもらうこともあります。いずれも他の患者さんに感染を拡げないための対策ですので、ご理解いただき、スタッフの案内に従っていただきたいと思います。
― 当日の食事で留意することはありますか。
メニューはふだんと同じでかまいません。できるだけ透析中に排便しなくてすむような時間帯に食事をしていただければスムーズに透析が行えます。便秘薬を飲んでいる方も排便のタイミングを調節してください。乳製品など、特定の食品でお腹がゆるくなる方は、透析前には避けたほうが良いでしょう。
血圧の高い日は自分で運転するのは控えて
― 通院の際に注意すべきことはありますか。
通院のための交通手段として、患者さんご自身で車の運転をされる方もいらっしゃると思います。朝の血圧がいつもより高い日は、ご自分で運転するのはできるだけ控えてください。通常は透析日、特に2日あいた日はたまった水分で体重が増えています。その分血圧も高くなりやすいのです。さらに運転による緊張が加わって血圧が上がると、脳血管障害が起こるリスクがあります。血圧の高い日は他の交通手段で通院するようにしてください。

透析中の服装や食事など
― 透析施設に着いたらまず着替えをします。どのような服装が良いのでしょうか。
多くの方がパジャマなどリラックスした服装で過ごされます。シャントが圧迫されないよう、腕がしめつけられない服装が良いですね。入院時とは異なり前開きの服である必要はありません。
なお、患者さんは通常透析の前と後に体重測定を行います。適正体重(ドライウェイト)は体重から衣服の重さを引いて算出しますが、正確に知るためにも、測定の際の服装が前回と異なる場合は、医療スタッフに申し出てください。
― 透析中に軽食や飲み物をとってもよいのでしょうか。
基本的には問題ありませんが、飲食の量によって除水量を変える必要がある場合がありますので、医療スタッフにお知らせください。ただ、透析中に体を起こすと血圧が下がってしまう方にはお勧めできません。横になった姿勢のまま食事をとると、誤嚥しやすく危険です。また、日頃から食後に低血圧症状が出やすい方も避けたほうが良いでしょう。
一方、糖尿病の方は、透析のスケジュールの影響で食事の時間が不規則になると、低血糖症状が出る場合もあります。透析日のインスリン注射や内服薬について、医師と相談しておくようにしてください。
帰宅後の「シャント再出血」に注意
― 自宅に帰ってからは、どのようなことに注意が必要ですか。
一番注意していただきたいのはシャントからの再出血です。透析に使用する針は一般の採血などに用いる針より太いので、傷がふさがるまでに時間がかかります。そのために帰宅後に傷から再出血することがあるわけです。もし、出血したら圧迫して止血する方法がありますので、スタッフに聞いて学んでおくといいですね。大抵は10分間ほど圧迫すれば血は止まりますが、それでも止まらない場合は遠慮せずに透析施設に電話連絡してください。また、帰宅後も血圧が上がらず、ふらつきやめまいで体調が悪い場合は横になり、足を上げていてください。しばらく経つと症状が治まってきます。それでも回復しない場合はやはり電話連絡してください。
― 透析日の入浴は?
当日の入浴は避けていただきます。浴槽をいくらしっかり清掃していてもお湯には雑菌があり、シャントから感染して炎症を起こすリスクがあります。特に人工血管を使っている方は細菌感染が治りにくいので、注意していただきたいと思います。また、透析日は血圧が不安定なため、湯につかることでより大きく変動する危険があります。
― 暑い季節など、シャワーは浴びてもいいですか?
暑い季節など、汗を流してさっぱりしたいときには、シャワーを浴びるのはかまいません。その際、シャントに防水のテープやカバーをつけ、水に濡れないように保護をして浴びるようにしてください。シャワーの湯には雑菌混入の心配はほぼありませんが、十分治っていない傷を守り、再出血を防ぐためにカバーでの保護は必要です。なお、血圧が平常値であれば、透析日の朝、通院前に朝風呂に入ることは全く問題ありません。

透析室の様子
患者さんへのメッセージ
透析をせずに毒素が体内にたまったまま我慢して過ごしていると、毒素の影響で気力が低下し、味覚障害が起こって食事もおいしく食べられません。しかし、透析で体調がよくなると食事がおいしくなり、頭痛や吐き気が治まったり、むくみがとれたりして元気になります。体調がよくなれば、また何か新しいことにチャレンジしてみようという気持ちも湧いてくるものです。
導入前は不安を訴えていた方も、実際に透析が始まってみると「もっと早く導入していればよかった」とおっしゃる方が圧倒的多数です。どうか心配せずに、私たちに任せてください。

透析センターの医療チームのみなさん

お話を伺った先生
南海医療センター 泌尿器科 透析センター長
平田 裕二 先生
[ 病院のご紹介 ]
病院名 | 独立行政法人 地域医療機能推進機構 南海医療センター |
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所在地 | 大分県佐伯市常盤西町11-2 TEL.0972-22-0547(代表) |
診療科目 | 消化器科、循環器科、血液内科、内分泌代謝科、透析センター、外科、脳神経外科、整形外科、泌尿器科、放射線科、耳鼻咽喉科、心臓血管外科、小児科(休診中)、皮膚科、麻酔科、専門外来、形成外科、リハビリテーション科 |
Webサイト | https://nankai.jcho.go.jp/ |

南海医療センター 外観