透析を受けながら活躍する人々
掲載:2019年 vol.37

澄んだように明るい笑顔が印象的な恵一さんとめぐみさん。お話の掛け合いもとても楽しく、周囲を幸せにする力に満ちている。
一日の終わりには感謝と希望の言葉を。
互いに支え合い、楽しい日々を大切に過ごしたいです。
大学職員
櫻井 恵一 さん
<櫻井 恵一 さん> 1971年、鳥取県生まれ。21歳の時、就職活動の際に腎臓の機能が低下していることがわかる。1年後に血液透析を導入。腎友会の青年交流会を通じてめぐみさんと知り合い、2010年に結婚。翌年に兵庫県へ移住。現在は大学事務の仕事に就いている。これまで患者会活動にも積極的に参加し、全国腎臓病協議会理事や鳥取県腎友会事務局長を歴任。大の阪神ファンで、ユニフォームを着て甲子園球場へ応援に行くのが楽しみ。料理が得意で、櫻井家の食事づくりを担当している。
大学職員
櫻井 めぐみ さん
<櫻井 めぐみ さん> 1973年、兵庫県生まれ。生後すぐの3ヵ月健診でクレアチニンの数値が高いと指摘される。3歳の時に高熱が続き、その後入退院を繰り返す。20歳の誕生日を迎え、血液透析の導入を決意。仕事を続けながら、ビーズ織りやラッピング、ソープカービング(石けんの彫刻)、ハンドケアセラピスト、笑い文字に取り組み、講師などの資格も取得。将来は教室を開き、たくさんの人を癒すのが夢。現在は大学で事務職員として勤務している。
夫婦で支え合いながら、大切な時間を過ごしていきたい。
― 透析を導入されたきっかけを教えてください。
恵一私は高校まで地元の鳥取県で過ごし、就職のために一度大阪に行きました。21歳の時に鳥取へ戻り、就職するためにハローワークに行くと、健康診断が必要だと言われて。その結果、腎臓の機能が低下していることを指摘されました。保存期はほとんどありませんでした。というのも、検査の翌年すぐに尿毒症とひどい貧血を起こし、透析を始めることになったのです。透析のことも詳しくわからず不安で体もつらく、とにかく「先生助けて!」と言いましたね。その後3ヵ月入院し、シャントをつくりました。医師は腹膜透析についても説明してくれましたが、私は体を動かすのが好きなので、血液透析を選びました。
めぐみ 私は生後3ヵ月健診の時に、クレアチニンが高いと指摘されました。3歳で42度の熱が1週間続き、コーヒー色の尿が出て、幼稚園にも行けませんでした。すぐに入院し、小学校も病院の院内学校に通学。小学2年生の2学期に、ようやく普通の学校に通えるようになりました。透析を導入したのは20歳の時です。たまたま診察日が20歳の誕生日で、「先生、20歳になったら自分で決められるんだよね? だったら透析をしたい」と、自分から透析を切り出しました。それまで体育の授業はほぼ見学で、友達ともほとんど遊べませんでした。もっと自由になりたかったんですね。透析をすればそれが叶うと思いました。先生は「自分から透析を希望する患者さんは見たことがない」と驚いていましたね。
― お二人が出会われたきっかけは?
恵一それぞれ鳥取県と兵庫県の腎友会の青年部に所属していて、その交流会で会ったのがきっかけです。
めぐみ 他の会員たちとも一緒に何度か食事に行って。どうやらその頃から、まわりの人たちは私たちをくっつけようとしていたみたいだけど(笑)。結婚には最初、躊躇しました。夫婦ともに透析をしているという人たちを知らなかったので、どんな生活になるのか想像できなかったんです。
恵一私は鳥取でそのようなご夫婦を何組も知っているので、特に不安はありませんでしたね。
― 結婚後の生活や治療は?
恵一 結婚後はそれぞれの地元で別に暮らしていましたが、1年後に私が兵庫へ出てきました。妻は幼い頃から長くお世話になっている病院があって、長時間・頻回のとても良い透析治療をしてもらっていました。その状態を変えたくないと思ったのです。
めぐみ 二人とも仕事をしながら透析を続けていましたが、同時に献腎移植の登録もしていました。ここ数年、何度か声がかかったのですが、肝腎・膵腎の同時移植のドナーだったため見送りになりました。
恵一 妻はそれを「良かった」と言うんです。2つの臓器を移植できる確率はとても低いので、そうした移植を必要としている患者さんが優先されるのは当たり前だと。
めぐみ 私は腎臓だけなので。でも、2年前に私も献腎移植を受けることができました。今は感染症に十分注意しながらの生活ですが、おかげさまで体調は安定しています。ドナーの方、そのご家族には感謝してもしきれません。日々の楽しさ、生きる喜びを与えていただきました。
― 共通の趣味があるそうですね。
めぐみ 二人とも阪神タイガースの大ファンで。甲子園球場も自宅から近いのでよく観戦に行きます。
恵一 月に3回ほど行けると幸せですね(笑)。この時はお酒も楽しみます。
めぐみ それから私は、ビーズ織りやラッピング、ソープカービング(石けんの彫刻)、ハンドケアセラピストなどをやっていて、講師の資格を持っているものもあります。また「笑い文字」と言って、感謝や喜びを絵文字で表現するアートがあるのですが、今までの経験や学びを活かして自分でも教室を開けたらと思っています。
― 大変仲が良いですね。
恵一実は今まで喧嘩をしたことがないんです。
めぐみ 普通なら喧嘩になりそうなやり取りも、深刻にならなくて。
恵一妻が明るくてさっぱりした性格なので、そのおかげもあります。
めぐみ 一日の終わり、寝る時には必ずお互いに「ありがとう」「また明日ね」と言うようにしています。恵一さんには、毎日本当に感謝でいっぱいです。
恵一これからも二人で元気に過ごしながら、家族や仕事以外の世界に触れたり、いろんな人とも出会って、人生を楽しんでいきたいですね。

来年、結婚10周年を迎える櫻井さんご夫妻。お正月には1年間の目標を立てるという。「10周年記念に旅行に行きたいな」「沖縄がいいかな」と本当に仲睦まじい。