秋の大自然と歴史を楽しむ 阿波の大人旅

掲載:2018年 vol.34

鳴門の渦潮(鳴門海峡)

ダイナミックな景観に思わず息をのむ。干潮・満潮の際に生じ、数十秒渦を巻いて消えては、また新たな渦潮が生まれる。

世界最大規模の渦に圧倒される、鳴門の渦潮。 間近でその迫力を味わって。

世界最大規模の渦に圧倒される、鳴門の渦潮。間近でその迫力を味わって。

 四国の東部、温暖な気候に恵まれ、剣山系の山々と美しい海が広がる徳島県。古くは、粟が多く収穫されていたことから「粟国(あわのくに)」と呼ばれていた県北部と、県南部の「長国(ながのくに)」が後に統合されて「阿波国(あわのくに)」となり、現在の徳島県となりました。北東に位置する淡路島は、もともと“阿波への道”を意味する「阿波路(あわじ)」から変化した名前です。

 

 その瀬戸内海側の播磨灘と太平洋側の紀伊水道を結んでいるのが、日本百景にも選ばれている鳴門(なると)海峡です。別名「大鳴門(おおなると)」とも呼ばれ、1985年には大鳴門橋が架けられました。播磨灘と紀伊水道の2つの海域は、潮の干満差によって激しい潮流が起こり、潮の速さは日本一。ここで発生するのが、渦潮(うずしお)です。渦潮は、大潮になる春と秋には最も大きくなり、世界最大規模の直径20メートルに及ぶこともあるといいます。この激しい海域で育った鯛は身が引き締まり、わかめは厚みがあるとして有名です。

 

 渦潮は、大鳴門橋遊歩道渦の道から見えるほか、観潮船でも間近で楽しむことができます。

山奥に広がる絶景の渓谷。祖谷の紅葉を満喫して。

徳島県の西部に広がる「祖谷(いや)」地域。岐阜県の白川郷、宮崎県の椎葉村とともに、「日本三秘境」の一つに数えられています。山の奥深くに広がるまさに秘境で、険しい山あいの渓谷や今では珍しいツルで編んだ吊り橋などが見どころです。

 

 祖谷渓(いやけい)は、標高1955メートルの剣山から流れる祖谷川の下流に広がる、深く切り立ったV字谷が続く美しい渓谷です。四国山地を横断していることから両岸が切り立ち、断崖絶壁を形成しています。秋には木々が鮮やかに色づき、一面の紅葉を楽しみに多くの人が訪れます。またここは複数の泉質の湯が湧き出ていることから温泉宿が点在しており、旅の疲れを癒してくれます。

 

 祖谷渓から少し南に下った先に続くのが大歩危(おおぼけ)・小歩危(こぼけ)の峡谷です。四国山脈の岩が吉野川の激流によって削られてできたもので、巨岩・奇岩が続くのが大歩危、その下流に細く曲がった急流の小歩危があります。約2億年もの歳月をかけてできた景観で、大自然の力の偉大さを感じさせます。大歩危は2014年に国指定天然記念物、翌年に国指定の名勝に登録。2018年には小歩危も国指定の名勝に登録されました。

祖谷渓の小便小僧

祖谷渓の小便小僧

大きな岩の上に佇む小便小僧の像。祖谷渓のかわいらしいシンボル。

大歩危峡遊覧船

大歩危峡遊覧船

所要時間は約30分。雄大な大自然を全身で感じるひとときを味わって。

 ここまで足を運んだらぜひ体験したいのが、「祖谷のかずら橋」です。シラクチカヅラという植物のツルを編んで作った橋で、全長45メートル、幅2メートルあります。実際に渡ることができ、周囲の絶景とともにスリルを満喫することができます。日本三奇橋にも数えられ、重要有形民俗文化財でもあります。また、同じく祖谷の原生林には「奥祖谷二重かずら橋」もあり、こちらは全長約44メートルの男橋と全長約22メートルの女橋が並行に架かっており、より深い森の風情を楽しむことができます。

祖谷渓

祖谷渓
鋭く切り立った断崖の間を急流が走る。紅葉の季節は、どこまでも見渡す山々が美しく色づく。

奥祖谷二重かずら橋

奥祖谷二重かずら橋

奥深い山にひっそりと架かる。

祖谷のかずら橋

祖谷のかずら橋

歩くたびにギシギシと音を立ててきしみ、揺れるのもスリル満点。

山奥に広がる絶景の渓谷。祖谷の紅葉を満喫して。

 徳島県の北西部には、江戸時代に栄えた町並みをそのままに残している地域があります。美馬市脇町は、かつて地元の特産である繭(まゆ)や藍(あい)で沸いた商いの町です。一時は100を超える商人たちが栄華をきわめ、邸宅が建ち並びました。その邸宅の特徴は、立派な「うだつ」です。うだつは、もともと家が隣り合って建つ場合に隣家から火事が移るのを避けるために防火壁として造られた部分です。しかしうだつを造るためには多くの費用が必要だったことから、脇町が栄えた江戸中期以降、豪商が自らの財力を顕示するために屋根にうだつを上げるようになりました。うだつの他にも虫籠窓(むしこまど)、格子造り、蔀戸(しとみど)など旧家ならではの建築風景もじっくり見学でき、その町並みは、国指定重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。

 

 またつるぎ町貞光には、「二重うだつ」という珍しいうだつが残っています。うだつの前半分が一段低く二段式になっており、正面に絵模様が施された、美術工芸としても大変貴重なものです。

 

 その他、三好市池田町にも30軒あまりのうだつが残されています。ここは幕末から明治中期にかけ、周辺の山間地で栽培される「葉タバコ」の集散加工地で、この葉タバコを細かく刻んだ「刻みタバコ」を生産し、隆盛をきわめました。当時に建てられた古い商家をそのまま利用した「阿波池田たばこ資料館」では、タバコ産業に関わる各種資料を展示しています。

脇町うだつの町並み

脇町うだつの町並み

まるで江戸時代にタイムスリップしたような体験ができる、懐かしい風情の町並み。

二層うだつの町並み

二層うだつの町並み

豪奢なうだつは、繁栄の象徴。みな競って、工夫を凝らしたうだつを上げたという。

独自に発展したあわにんぎょうじょうるり阿波人形浄瑠璃。地元の劇場で継承される伝統の技。

 阿波(徳島)は、全国有数の「人形浄瑠璃(じょうるり)の国」です。人形浄瑠璃は、室町時代に淡路島で発展した人形芝居で、人形遣い・太夫(物語を語る人)・三味線の音楽で構成される日本の伝統芸能です。阿波国(あわのくに)に伝わった後、神社の境内に建てられた農村舞台で、祭礼などとして上演されてきました。野外の舞台で映えるよう、元来のものより人形の頭を大きく作るようになり、それが現在残る「阿波人形浄瑠璃」の大きな特徴となりました。後に「文楽(ぶんらく)」と呼ばれる上方(京阪地方)の人形浄瑠璃とは異なる、素朴で力強い姿が魅力の一つです。

 

 阿波人形浄瑠璃の文化を今に伝えているのが「徳島県立阿波十郎兵衛屋敷」です。浄瑠璃の題材にもなった板東十郎兵衛の屋敷跡に建てられ、阿波人形浄瑠璃専門館となっています。毎日2回の定期上演があり、間近でその魅力を存分に味わうことができます。

独自に発展した阿波人形浄瑠璃(あわにんぎょうじょうるり)。地元の劇場で継承される伝統の技。
独自に発展した阿波人形浄瑠璃(あわにんぎょうじょうるり)。地元の劇場で継承される伝統の技。

阿波十郎兵衛屋敷

阿波人形浄瑠璃の拠点施設。素朴で美しい人形が魅力で、「傾城阿波の鳴門 順礼歌の段」をはじめ、歌舞伎にも通じる演目が上演される。

万葉歌人にも詠まれた、眉の名を持つやさしい姿の山。

 徳島県の中心である徳島市でも、豊かな自然と歴史を感じることができます。吉野川がゆったりと流れ、眉山(びざん)が望めます。眉山はどの方向から見ても眉の形をしていることからこの名で呼ばれ、歌人・船王が詠んだ“眉の如雲居に見ゆる阿波の山かけてこぐ舟泊知らずも”という句は、万葉集にも収められています。四季それぞれの豊かな表情を見せる他、四国一ともいわれる夜景も素晴らしく、市民の憩いの場となっています。山麓と山頂はロープウェイで結ばれ、山頂には絶景を満喫できる展望台の他、第二次世界大戦での戦没者を慰霊するパゴダ平和記念塔など歴史に触れられる施設があります。

眉山

眉山

夕暮れの眉山。なだらかな稜線が空にくっきりと浮かび、町の明かりが輝きはじめる。

吉野川堤防沿いの菜の花

吉野川堤防沿いの菜の花

万葉歌人にも詠まれた、眉の名を持つやさしい姿の山。
万葉歌人にも詠まれた、眉の名を持つやさしい姿の山。
万葉歌人にも詠まれた、眉の名を持つやさしい姿の山。
万葉歌人にも詠まれた、眉の名を持つやさしい姿の山。
秋の大自然と歴史を楽しむ TOKUSHIMA - AWA -「徳島」旅のおさらい
おすすめのホテル
祖谷の宿 かずらや

祖谷の宿 かずらや

かずら橋や琵琶の滝のほど近くに佇む、風情あふれる宿。四季の移ろいを楽しめる展望露天風呂や、地元の旬の食材をふんだんに使った美味が自慢です。

 

三好市西祖谷山村閑定78
アクセス:JR大歩危駅から車で約20分
お問合わせ:0883-87-2831