〈透析医療の現場から〉特定医療法人 桃仁会病院

掲載:2018年 vol.32

佐藤 暢 先生

お話を伺った先生

特定医療法人 桃仁会病院

副院長・バスキュラーアクセスセンター長

佐藤 暢 先生

桃仁会病院は、1974(昭和49)年に前身となる馬杉医院を開設。当時から透析治療を専門に行う。1986(昭和61)年、「医療法人 桃仁会」へ組織替えを行い、翌年同病院を開設。その後、付属診療所や老人保健施設、訪問介護ステーションなどを開設。2016(平成28)年には、血管のケアに特化した「バスキュラーアクセスセンター」を開設。患者さんを中心とした専門性の高いチーム医療で、最先端のシャント治療を牽引している。

全国でも有数のシャント治療専門「バスキュラーアクセスセンター」を開設。

 近年大きく進歩する人工透析において、「シャント治療」に注目が集まっています。1974(昭和49)年から透析治療を開始し、現在では京都府下で最大の透析施設である桃仁会病院では、早くからシャント治療を重要と考え注力してきました。2016年には、「バスキュラーアクセス※センター」を開設。専門医による細やかなケアを提供しています。

 「透析自体の質の向上にともない、患者さんが長生きできるようになりました。加齢や長期の透析によって血管の状態が少しずつ悪くなるため、透析の継続には血管の治療がとても重要になってきます。また最近は糖尿病性腎症から透析に入られる方も増えてきています。こうした患者さんもまた血管のケアが大切だと考えています」と、副院長でバスキュラーアクセスセンターのセンター長・佐藤暢先生は話します。

 桃仁会病院のバスキュラーアクセスセンターには大きく2つの特長があります。1つ目は、治療にあたる医師全員が直接透析に携わる専門医であること。あらゆる種類のバスキュラーアクセスに精通しており、手術やPTA(経皮的血管形成術)も行うため、患者さん一人ひとりの症例に合わせて、もっとも良い治療方法を選択できます。「シャントは、透析のために必要であると同時に、患者さんの体に負担をかけるものでもあります。一人ひとりの患者さんの血管の状態に合わせて、シャントの作成や修復を行い、場合によっては血管を広げたり逆に血流を抑制する手術も行っています」と佐藤先生。診察時には検査値のチェックだけでなく、患者さんの声に耳を傾け、変化を見逃さないことを重視しています。「めまいや息切れ、肩こりといった症状は、患者さん自身が一時的または生活習慣が原因の症状と考え、医師に伝えないことも多いのですが、実は過剰血流が原因で起こるケースもあります。私たちは日頃、“見て・聞いて・触って”患者さんの状態を確認しており、そうすることで、小さな変化にもすぐに気付いて対応できるように心がけています」と話します。

 2つ目の特長は、院内に入院設備があるため、手術後の入院が必要な患者さんにも対応できる点です。「バスキュラーアクセスのかかりつけ医」として手術後・周術期のケアにも携わることで、患者さんが安心して治療に専念できるような環境を目指しています。

 その他にも、週に2回、専門外来(予約制)も行っており、シャントで困っている方の相談に応じています。また希望する他院の専門家を集めて研修なども積極的に実施。透析患者さんのより良い治療の実現に貢献しています。

※「バスキュラーアクセス」…シャントなど、血液透析を行うための血液経路。

1階のエントランスフロア
診察待合

1階のエントランスフロア(左)と診察待合(右)。広々とした空間と穏やかな色彩で、治療に来ていることをできるだけ忘れられるよう、「癒しとくつろぎ」が感じられるように工夫されている。

患者さん一人ひとりに合わせた最適な医療を実現する、 診療体制や施設・設備が充実。

 「桃仁会病院では、“透析患者さんのための総合病院”を目指しています」と話す佐藤先生。バスキュラーアクセスセンターと同じく、透析患者さんをサポートする診療体制や施設、設備が大変充実しています。

 人工透析療法を中心に、腎疾患や腎不全の合併症に対する治療にさまざまな診療科が連携しながら対応。腎臓内科、循環器内科、泌尿器科、整形外科など7つの専門分野で、医師や看護師、技師、管理栄養士、ソーシャルワーカーといったスペシャリストが一体となってチーム医療に取り組んでいます。このことにより、身体面のサポートだけでなく、精神面や社会的・経済的な問題の改善・解決にも患者さんと一緒に向き合っていけるように心がけています。

合併症に対する総合的な医療体制
透析医療のスペシャリストと患者さんと接するスタッフのチームワークこそが、治療や予防の最大のポイント。

透析医療のスペシャリストと患者さんと接するスタッフのチームワークこそが、治療や予防の最大のポイント。

佐藤 暢 先生

「シャントは作れば良いのではなく、一人ひとりに最適な方法を見極めて作り、継続的に治療していくことが必要です。高齢の方や糖尿病腎症から透析を導入される方が増えることで、血管に関するケアが変わってきており、シャント治療は近年ますます重要視されてきています」と佐藤先生。

 また施設や設備面でも、透析患者さんのサポートが第一に考えられています。病院の中核である透析室は、医療スタッフがスペース全体を見渡すことができる空間設計で安心です。また透析ベッドは、ゆったりと体をあずけられるソファースタイルを採用。液晶テレビも設置し、長時間の透析によるストレスを少しでも軽減できる工夫をしています。

 リハビリテーション室は、「腎臓リハビリテーション※」を行う施設。患者さんが日常の動作を負担なく行えるよう、運動療法・物理療法などさまざまなリハビリテーションのプログラムを用意し、専用器具を使って取り組んでいます。

 そして食堂では、透析患者さんのために管理栄養士が考案したレシピで作られた食事が、提供されています。リンやカリウム、塩分といった栄養成分にも配慮されているので、全部しっかり食べても安心です。実際に「これだけ食べても良いの?」とおっしゃる患者さんも多いといいます。桃仁会病院では、「食事を過度に制限するのではなく、しっかり食べてしっかり透析をする」という考え方のもと、気になる成分に注意しながらも、食事をおいしく楽しんで食べられることを大切にしています。

 その他にも、桃仁会病院では、近年の自然災害時の教訓を未来へ活かすため、災害対策も積極的に行っています。佐藤先生は、「病院施設の免振対応をはじめ、災害時の給水確保や自家発電など、患者さんが安心して透析を行えるように配慮しています」と話します。最新の医療と、患者さんへの細やかなサポートで、これからも地域に根差した透析病院としてその役割はますます大きくなっていきます。

※腎臓リハビリテーション…慢性腎不全の患者さんに対し、運動療法、教育・食事療法、薬物療法、精神的ケアを通して代謝の改善を図るとともに、日常生活においてスムーズな動作が行えることを目的とした包括的な療法。

安心と快適を追求した、充実の施設や設備。
透析室
リハビリテーション室
食堂
お問い合わせ
特定医療法人 桃仁会病院

〒612-8026
京都市伏見区桃山町伊賀83番1

TEL 075-622-1991

http://www.tojinkai.jp

バスキュラーアクセスセンター・泌尿器科・腎臓内科・循環器内科・消化器内科・整形外科・リハビリテーション科など、人工透析療法を中心に、腎疾患や腎不全合併症に対する治療を各科で連携しながら対応している。

桃仁会病院の医療スタッフのみなさん。

桃仁会病院の医療スタッフのみなさん。チーム医療を取り入れ、患者さん一人ひとりに合ったきめ細かいケアを心がけている。

【関連施設】

桃仁会病院 付属診療所・烏丸透析クリニック・老人保健施設 桃寿苑・桃仁会クリニック・サテライト老健 桃寿苑・居宅介護支援事業所・訪問介護ステーション 千寿・サービス付き高齢者向け住宅 やすらぎ

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