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手術ができない場合は、進行を抑える分子標的治療薬を

――薬による治療とはどのようなものでしょうか?

澤木   GISTの薬物治療では「分子標的治療薬」を使います。これは、一定の期間飲み続けることで、GISTの進行を抑える働きがあります。先ほど述べたように、GISTでは主にKITタンパクの異常により腫瘍細胞が増殖して病気が進行しますが、分子標的治療薬は、この異常なKITタンパクにくっつき、異常な信号を出さないように働くことで、GISTの進行を抑えるのです。従来の抗がん剤は、がん細胞と一緒に正常な細胞も攻撃してしまいますが、分子標的治療薬は腫瘍の増殖に関わる分子だけを狙って攻撃するため、正常な細胞に与えるダメージが少ないと言われています。
また、分子標的治療薬によっては、腫瘍細胞を兵糧攻めにする働きを併せ持つものもあります。腫瘍細胞は、近くの血管から自分のところまで新しい血管を伸ばし(血管新生)、酸素や栄養をより多く取り入れようとします。その結果、腫瘍は快適な環境で増殖し、時には血流に乗って他の組織や器官に転移することになります。これに対し、ある種の分子標的治療薬は、新しい血管が作られるのを防ぐ(血管新生阻害効果)ことにより腫瘍細胞への栄養補給を断ち、GISTの進行を抑える働きを示します。

図8. 分子標的治療薬による腫瘍の増殖抑制効果
図9. 分子標的治療薬による血管新生阻害効果