医療で用いられる放射線の基礎知識

人工的に作られた様々な放射線の持つ
透過性、電離作用が医療に活用されています

放射線には2つの種類があります。

1つは電磁波(電波や光の仲間)です。電磁波は波の性質を持っており、波と波の間隔(波長)が短くなっていくと、電波→光→紫外線から放射線(X線、γ線)になります。もう1つは粒子線で、あらゆる物質をつくっている原子の構成成分である電子や陽子、中性子などの粒子が放射線(α線、β線など)になります。

放射線を発生させるには、高い電圧で加速した電子をぶつけることによりX線を発生させたり、粒子を加速したりします。

また、放射性同位元素(ラジオアイソトープ:RI)の原子核から出る放射線を用います。RIは、原子が不安定な状態から安定した状態になる時に、電磁波(γ線)、電子(β線)、陽子2個、中性子2個のヘリウム原子核(α線)が放出されます(図表2)。

放射線は、食物や大地など自然界にも宇宙にも存在しています。医療で利用されるのは、放射線発生装置や加速器などで人工的に作られた放射線です。医療で重要な放射線の性質は、透過性と電離作用です。

透過性と電離作用

透過性は放射線の種類で異なります。α線は透過性が低く、紙も通り抜けることができません。β線は紙は通り抜けますが、薄い板で止まります。X線やγ線はより透過性が高く、紙、アルミニウムなどの薄い板、人の皮膚や筋肉も通り抜けますが、鉛の板は通り抜けることができません。粒子線はエネルギーにより透過性が異なるため、粒子線治療では体の表面を通過し、がんの部分で止まるようにエネルギーを調整します。

電離作用とは、放射線が物質を透過する時にその物質を構成している原子や分子に放射線のもつエネルギーが与えられ、原子や分子から電子を分離させる作用です。放射線が人の細胞を通過するとこの電離作用が起こり、DNA(遺伝子)が傷害されます。細胞分裂(増殖)を盛んに行っているがん細胞ほど電離作用の影響を大きく受け、DNAの修復機能が働かずに、細胞が死滅したり、増殖できなくなったりします(図表3)。この特性を利用してがんの放射線療法が行われています。

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図表2  放射性同位元素から放出される放射線

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図表3  放射線の電離作用を用いたがん治療

『人と放射線のかかわり』核医学診療推進国民会議を参考に作成