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前立腺がん骨転移への放射線療法

前立腺がんでは造骨性の骨転移が多く、
痛み、しびれ、病的骨折などによりQOLが低下

がんが進行すると、がん細胞の一部が血液の流れにのって骨に移動し、そこで増殖する、骨転移が起こります(図表7)。

骨転移したがんそのものの治療だけでなく、骨折の予防、神経が圧迫されることによって起こるしびれや痛みなどの症状を緩和するために、緩和放射線療法が行われます。

図表7 骨転移のメカニズム
図表7 骨転移のメカニズム

『骨転移の診療とリハビリテーション」』
大森まいこ他編:医歯薬出版株式会社2014年を参考に作成

前立腺がんでは、骨転移巣の周辺に骨芽細胞(骨をつくる細胞)が増殖し、造骨性の骨転移が脊椎、肋骨、骨盤、大腿骨などに起こりやすいことが知られています。去勢抵抗性前立腺がんでは80%以上の高い頻度で骨転移が認められます。

骨転移の進行

骨転移が進行すると、①がん細胞が骨の中の神経を刺激し、脊髄などの周辺組織を圧迫することで痛みや手足のしびれ・麻痺が、②骨を脆くすることから日常動作程度で骨折(病的骨折)が、③骨の中のカルシウムを溶かすために高カルシウム血症(吐気、倦怠感、多尿、意識障害など)が起こることがあります。そのため、骨転移では、食欲がなくなる、十分な睡眠がとれないなどの体力、気力、QOLの低下や、場合によっては動けない、1人で歩けないなどの重度のQOL低下につながることが大きな問題となります。

前立腺がんの骨転移の検査

前立腺がんの骨転移の有無や広がりの程度は、骨シンチグラフィー(骨シンチ)やCT、MRIなどの画像検査で確認します。また、血液検査でALPなどの骨代謝マーカーも調べます。

※骨シンチグラフィー:
がんの病巣に集まる性質をもつ、放射性物質を含む薬剤を血管内に投与した後に撮影し、がんのある部位に薬剤が集まって黒く映し出されることで転移の部位が分かる検査。

前立腺がんの骨転移の治療

前立腺がんの骨転移の治療法には、①骨折の予防・治療のために骨を器具で補強したり、骨転移を取り除いて人工の骨や補強材を入れたりする整形外科的な手術療法、②痛みや手足のしびれ・麻痺(脊髄圧迫)、病的骨折の予防に対する放射線療法、③主に破骨細胞に作用し、骨が過剰に破壊されるのを阻止するビスホスホネート製剤や抗ランクル抗体などの骨修飾薬による薬物療法、④主に痛みを和らげるオピオイド、非ステロイド性消炎鎮痛薬、鎮痛補助薬などによる薬物療法があります。

骨転移に対する緩和放射線療法

痛みや手足のしびれ・麻痺、病的骨折に対する緩和放射線療法としては、骨転移のある部位に体の外から放射線をあてる外照射が第一選択になります。

また、骨の代謝が活発な骨転移巣に集積しやすい性質を持つRIを注射して体内に投与し、体の内部から放射線をあてるRI内用療法(図表8)があります。さらに、オリゴメタ(少数転移)のときには、前立腺または転移部位に照射を行う試みもあります。

図表8 骨転移に対するRI内用療法
図表7 骨転移に対するRI内用療法

このように様々な治療法や緩和療法がありますが、早期に適切に対処してもらうためには、痛みやしびれ、麻痺などの症状を感じたら、担当医や看護師などの医療スタッフにすぐに具体的に伝えることが大切です。

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放射線療法と非再発率

放射線療法では、線量を増やすことと内分泌療法との併用が、非再発率の改善に寄与するといわれています。
非再発率の向上には、副作用を抑えつつ、どれだけ多くの線量を照射できるかがポイントとなります。
内分泌療法の併用期間は、中間リスクでは4〜6カ月程度、高リスクでは 2〜3年とされていますが、副作用が強く現れる人にとっては、内分泌療法の長期化は辛い場合があります。併用期間については医師と相談しておくとよいでしょう。