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前立腺がんで行われる治療

治療法は複数あります
よく理解した上で納得のいくものを選んでください

前立腺がんの3大治療は、他の多くのがんと同様に手術、放射線療法、薬物療法です。それらに加えて、前立腺がんでは、他のがんに比べておとなしく、進行が非常にゆっくりしていることが多いため、監視療法やフォーカルセラピー( 下記コラム参照)が行われることもあります。

手術と放射線療法

前立腺がんの手術と放射線療法は、がんを治すこと(根治)を目的に行われます。いずれもがんが前立腺の中にとどまっている限局性がんで最も推奨される治療法です。

前立腺がんの手術は、前立腺と精嚢を摘出した後、排尿路確保のために膀胱と尿道をつなぐ前立腺全摘除術が基本です。同時に前立腺周囲のリンパ節を取り除くこともあります。

手術の方法には従来からの開腹手術のほか、患者さんの体への負担や尿失禁、男性機能障害などの合併症の低減をめざした腹腔鏡手術があり、腹腔鏡手術には手術支援ロボットを用いたロボット手術もあります。

放射線療法には、体の外からがんに放射線をあてる外照射と体の内部からあてる内部照射があります。

外照射は、主にリニアックという放射線治療装置(図表1)によって行われます。トモセラピーなどの強度変調放射線治療(IMRT)の専用装置もあります。

内部照射は、主に小線源療法によって行われます(図表1)。骨転移に対してのRI内用療法という治療法もあります。

図表1 外照射と内部照射(小線源療法)の治療
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薬物療法(内分泌療法、化学療法)

前立腺がんの薬物療法には主に内分泌(ホルモン)療法と化学療法(抗がん剤)があります。

前立腺がんは、アンドロゲン(精巣および副腎から分泌される男性ホルモンの総称)の影響を強く受け、その働きかけによりがん細胞が増殖する性質があります。そこで、アンドロゲンの分泌そのものや、アンドロゲンのがん細胞に対する働きを抑えるのが内分泌療法です。近年、複数の新薬(第2世代の抗アンドロゲン薬)が登場し、選択肢が増えています。

内分泌療法は、心臓病などの持病があったり、がんがほかの臓器に転移していたりして手術や放射線療法を行うことが難しい場合、あるいは手術や放射線療法の前後に根治性を高める目的で行われます。

化学療法は、一般的に転移があり、内分泌療法の効果がなくなった場合(去勢抵抗性前立腺がん・CRPC)などに行われます。免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬が検討されることもあります。

監視療法

監視療法とは、前立腺がんと診断された際、すぐに治療を始めなくても余命が変わらないと判断された場合に、3〜6カ月ごとの直腸診とPSA検査、および1〜3年ごとの前立腺生検でがんの進行がないことを経過観察し、がん細胞の増殖などがみられた時点で治療を開始する治療法です。

最近ではPSA検査の普及により前立腺がんの早期発見が可能になっていることから、過剰な治療を防ぎ、手術などに伴う患者さんの苦痛や生活の質(QOL)の低下を避ける意味で、監視療法は治療の有力な選択肢の1つになりつつあります。

PSA検査:前立腺から分泌されるPSA(Prostate Specific Antigen=前立腺特異抗原)の血中濃度を測定して前立腺がんの可能性が高い人を見つける検査。

骨転移治療と緩和治療

これらのほかに、骨転移に対する治療や、患者さんの苦痛を取り除き、QOLを維持するための緩和治療が行われます。

緩和治療では、痛みに対しては鎮痛薬、肺転移による咳・痰に対してはステロイド薬、鎮咳剤、去痰薬、苦しさに対しては少量の麻薬などの薬物療法が行われます。肺に水が貯まった場合には、その水を抜く処置が行われます。また、骨転移による疼痛緩和に放射線療法が行われます。

以上のように、前立腺がんでは様々な治療が行われています。患者さんの状態によっては、複数の治療法を選択できることもあります。担当医をはじめ、放射線治療医、看護師、薬剤師などの医療スタッフから詳しく説明を聞き、よく話し合いましょう。PSA検査の結果、腫瘍悪性度、リスク分類、年齢、期待余命だけでなく、自分の価値観や人生観、生活スタイルなどを考慮して、納得いく治療法を選んでください。

また、気になる症状があれば、我慢や遠慮をせずに、早めに医療スタッフに相談して適切に対処してもらいましょう。

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フォーカルセラピー

フォーカルセラピーとは、監視療法と手術や放射線療法による根治治療の中間に位置する治療法です。限局性前立腺がんの治療選択肢の1つとして、がんを治療しながら正常組織をできるだけ残し、治療と身体機能の維持の両立を目ざして行われています。ただし、フォーカルセラピーにはさまざまな治療が含まれるため治療の評価が難しく、効果についてはいろいろな意見があります。担当医とよく相談して治療法を決めてください。

セカンドオピニオン

診断や治療方針について担当医から説明された後、さらに情報がほしいときには、別の医師に意見を求める「セカンドオピニオン」を利用する方法があります。
セカンドオピニオンを受けたいときには、担当医に紹介状や検査記録、画像データなどを用意してもらう必要があります。利用にあたっては担当医のファーストオピニオンをまずはしっかり聞くこと、セカンドオピニオンの内容を担当医に伝え、もう一度治療方針についてよく話し合うことが大切です。
セカンドオピニオン外来のある病院の情報は、近隣のがん診療連携拠点病院の相談支援センターで得られます。予約が必要で有料であることが多いので、セカンドオピニオンを受ける病院には事前に受診方法と費用を確認しましょう。