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前立腺がんの放射線療法(根治療法)

根治をめざした放射線療法は、単独あるいは内分泌療法などと併用で実施

前立腺がんの放射線療法の目的の1つは「根治」です。

根治をめざす放射線療法の治療方針

根治目的の放射線療法は、がんが前立腺の中にとどまっている「限局性前立腺がん」、またはがんが前立腺の外にまで広がっているが転移はない「局所進行前立腺がん」が、主な対象になります。

限局性前立腺がんに対する放射線療法は、低リスクのがんでは外照射または小線源療法が単独で行われます。小線源療法で多く行われているのはLDRで、低リスクのがんではLDR単独で、中間リスクのがんでは外照射との併用が多くなります。悪化する可能性が高いと考えられる高リスクのがんでは内分泌療法も併用したトリモダリティという治療法も行われていますが、実施している施設は限られています。HDRは精嚢にも十分な照射がしやすいという特徴もあり、中間、高リスクのがんに対して多く用いられおり、LDRと同様、内分泌療法と併用されることもあります。

局所進行前立腺がんの放射線療法も、内分泌療法と併用で行われます。リスクが高くなるほど、内分泌療法の期間が長くなり、外照射と小線源療法が併用されることもあります(図表5)。また、根治手術後の生化学的再発(PSA値上昇のみ)に対して、根治をめざして救済放射線療法が行われることもあります。

図表5 限局性前立腺がんに対する放射線療法の治療方針
図表6 診療の流れ(外照射の場合)
リスク分類

PSA値、がんの大きさ(T因子)、病理組織(グリソン分類)によって、低、中間、高リスクに分けられます。

放射線療法の特徴

限局性前立腺がんの場合、放射線療法はがん局所に対する治療法として手術と同等の効果を期待できます。また、手術の場合、早期なら神経温存手術を選択できることもありますが、そうでない場合、術後に男性機能障害や尿失禁などの合併症を伴う可能性があります。一方、放射線療法は手術のように臓器を取り除くことや神経を切断することがないため、これらの合併症はほとんど起こりません(長期的には男性機能障害が起こることがあります)。

放射線療法の主な副作用として、外照射では急性期(治療開始3カ月以内)に頻尿、排尿・排便時の痛みが、それ以降の晩期に膀胱・直腸障害による血尿や血便がみられることがあります。いずれも近年は治療技術の発達により軽度で済むようになっています。

放射線療法では直腸や膀胱、尿道の一部にも放射線があたるのを避けるためにさまざまな工夫がなされており、最近では、ハイドロゲルスペーサーが保険適用になり、患者さんの状態によっては副作用軽減のために使用されることもあります。

小線源療法の副作用は外照射とほぼ同じですが、程度や発現時期が異なります。

根治放射線療法の診療の流れ

担当医から前立腺がんの治療として放射線療法を勧められ、放射線治療医から詳しい説明が聞きたい時や放射線療法を受けると決めた場合、放射線治療医が紹介されます。放射線治療医は患者さんを診察し、様々な検討を行った上で、患者さんに適した治療方法・期間・効果・副作用などについて説明します。

その説明に納得して、放射線療法を受ける気持ちが固まれば、放射線治療医により治療が開始されます(図表6)。

図表6 診療の流れ(外照射の場合)
図表6   診療の流れ(外照射の場合)

国立がん研究センターがん情報サービスより作成

通常、X線を用いた外照射は、1回15〜30分程度で38〜39回、約2カ月間かかります。

近年、1回の放射線の量(線量)を増やして照射回数を減らし、治療期間を短くする寡分割照射が行われるようになりました。特に4週間程度で治療を終える中等度の寡分割照射は一般的になっています。なお、1回の線量をさらに増やして1~2週間で終える超寡分割照射も実施されています。いずれも保険適用となっていますが、施設によって方法は異なり、それぞれ利点・欠点がありますので、放射線治療医によく相談してください。

粒子線治療の期間は、陽子線で約3〜8週間、重粒子線で約3〜4週間です。

小線源療法は麻酔を要し、LDRでは1回、HDRでは数回に分けて線源を挿入し、LDR、HDRとも短期間の入院が必要になります。治療中および終了後も、治療効果と副作用を確認するために定期的に放射線治療医の診察があります。LDRでは小線源を永久に留置しますが、体外には放射線がもれ出ることはほとんどなく、線量は徐々に減り、1年後にはほぼゼロになります。

根治放射線療法の選択にあたって

手術か放射線療法かを迷う患者さんは少なくありません。放射線療法を行うと決めても、その種類の多さから、どれを選択すればよいのか悩むこともあるでしょう。そのような場合は遠慮せずに担当医や放射線治療医からも詳しい説明を受け、自分の考え方や生活スタイルに合った治療法を一緒に検討してもらってください。

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3者併用療法(トリモダリティ)

治療効果を向上させるために、外照射と小線源療法と内分泌療法の3つを組み合わせて行う治療法のことです。高リスクのがんに推奨されているほか、明確な基準はないものの中間リスクのがんの一部にも適応があります(図表5)。一般的な治療の流れは、放射線療法の治療効果を高めるために、まず3カ月程度内分泌療法を行い、その後、小線源療法を実施し、さらに外照射を行いながら並行して内分泌療法を行うというものです。ただし、内分泌療法の期間は患者さんにより異なります。適応については、担当医のほか、放射線治療医に相談してください。