前立腺がんセミナー in 高松

もっと話そう前立腺がん転移のこと
くらしを守る早期対応のすすめ

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2019年6月16日(日) 14:00〜17:00
かがわ国際会議場(高松市)

当日は、127名(患者62名を含む)が来場し、座長や演者からの質問にアンサーパッドを用いて回答していただく、参加型のセミナーとなりました。

本ページではご講演を抜粋してご紹介しています。全文はWebでご覧いただけます。
https://www.cancernet.jp/zenritsusen190616

座長より


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杉元 幹史 先生

香川大学医学部 泌尿器科学 教授

前立腺がんが転移した場合には、基本的に全身療法であるホルモン療法を行います。ホルモン療法は70年以上前から行われています。その間、転移のある前立腺がんに対する治療はほとんど変わりませんでしたが、ここ数年で治療法は目覚ましく進歩しています。これまでのホルモン療法に新しいホルモン剤や抗がん剤を併用したり、転移後であっても原発巣である前立腺に対し放射線治療や手術を行ったりすることで生命予後が延びることがわかってきています。がん治療はまさに日進月歩。前立腺がんについては、とかく過剰治療といわれがちですが、正しい知識を持って正しく治療することが大事です。

治療と向き合う上で大切なこと〜骨転移を体験して

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川﨑 陽二 さん

1958年生まれで、徳島県に住んでいます。2012年に前立腺がんと診断されましたが。デイサービスセンターで介護福祉士として働きながら治療を続けています。私の場合、会社の一員という認識がなくなると孤独を感じ、治療にも前向きに向き合えないのではないかという思いもあり、今も働いていますし、それが自分には大きなプラスになっています。

7年前に前立腺がんと診断されてからの自分の状態をグラフにしてみました。茶色が痛みで、紫がQOL(生活の質)を表します。がん診断を受けて放射線治療、緩和治療を行い骨転移に関しては手術やブロック注射などを受けてきて、今に至ります。治療開始翌年からの5年のQOLはいい状態ですが、最近は痛みと半々といった感じです。

前立腺がんと診断される前は、がんのことは何も理解してなかったように思います。高熱のため診察に行った内科から泌尿器科を紹介されたことで前立腺がんが見つかりました。すでに骨とリンパ節に転移があり、治療前のPSAは700ng/ml、グリコンスコアは10でした。思えばそれ以前から腰痛や肩こりといった症状は出ていたのですが、まさかがんによる骨転移とは思わず、介護職のプロとしての「勲章」と甘くみていた自分がいました。

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PSAやグリコンスコアの値を見ていただければ、当時、私が受けたショックはわかっていただけると思います。下ばっかり向いてはいけない、家族もいるから前に進まなくてはと奮起しましたが、骨の痛みはときに想像を絶するものがありました。最初の骨シンチの画像をみると、背骨、骨盤、鎖骨、肋骨のあたりも黒いですが、一番ひどかったのが脊椎で、ひどい腰痛が1週間くらい続いたため放射線科の治療を受けました。その後腰部脊柱管狭窄症を発症。神経が圧迫され、ほとんど歩けなくなったため、ブロック注射を打って痛みを緩和。それでもまた歩けなくなったため腰部脊椎除圧術、さらに内視鏡による除圧術も受けました。治療の影響であごの骨がもろくなりやすいため、口腔外科にも4週間に1回通い、泌尿器科や整形外科とも連携と取っていただいています。

前立腺がんとの向き合い方ですが、私はごく普通の日常生活というのを大切にしてきました。私の場合、社会の一員という認識がなくなると孤独を感じ、治療にも前向きに向き合えないのではないかと思うのもあり、今も働いていますし、それが自分には大きなプラスになっています。QOLを保つことも重要です。治療のためだからと生活をガラリと変えてはかえってしんどいかもしれません。

治療と向き合う上で大切なことと思うのは、私が腰痛を職業病と軽くみてしまったように自己判断はやめること。そして、小さな痛みでも、主治医に訴えることです。痛みにはいろいろあります。針で刺されるようなチクチクした痛みでも、痒いような痛みであっても、今までとは違う感覚があれば訴えてほしいと思います。それをしっかり伝えることで先生方はそれに適した治療を行ってくれるのだと思います。

患者さん個人のご経験をお話しいただきました。すべての患者さんが同様の経過を示すわけではありません。

前立腺がん転移について知ってほしいこと

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上松 克利 先生

三豊総合病院 泌尿器科 部長

骨転移を起こすことでもっとも問題となるのはいわゆるQOL(生活の質)です。QOLの問題は患者さん自身から発信してもらわないとわかりません。 ぜひ遠慮せず、積極的に相談してほしいと思います。

前立腺がんの転移で多いのは骨転移

前立腺がんは非常につきあいが長くなる病気といわれています。がんと診断された人が5年後に生存している割合を示す5年相対生存率という指標がありますが、全がんの5年相対生存率が60%程度なのに対し、前立腺がんでは97.5%と高くなっています※1。

前立腺がんは骨への転移が多いのが特徴です。ホルモン治療が効かなくなった状態のものを去勢抵抗性前立腺がんといいますが、その場合の骨転移の頻度は80%以上と知られています。

骨転移の検査と治療

骨転移の検査としては、血液検査であるPASという腫瘍マーカーがよく使われており、大きな指標になります。何らかの治療を行っていてもこのPSAの数値が上がっていけば、それはがんの勢いを示すものになるので、骨転移を疑うことがあります。また、血液検査や尿検査による骨代謝マーカーというものもあり、骨に破壊があったり、何らかの影響があったりすると数値が上がります。疑いがある場合には骨シンチグラフィーで画像診断を行います。骨シンチは、骨転移の部位に集まる性質を持つ放射線物質を含む薬剤を血管内に注射して全身の骨を撮影するもので、骨転移の部位に薬剤が集まり黒く写し出されます。最終的にはCTやMRIの検査を行って確定することが一般的です。

前立腺がんの薬物治療には、主にホルモン療法、化学療法、放射線医薬品の3つがあります。
ホルモン療法は転移やある程度の進行が見られる場合に柱となる治療で、男性ホルモンの分泌や働きを妨げることにより、がん細胞の増殖を抑えていくものです。この効きが悪い場合やがんが再び増殖した後には化学療法となりますが、最近は前倒しで行われることが増えており、最初の段階でリスクが高いがんだと診断した場合は、ホルモン治療と合わせて早い段階で化学療法を行うことがあります。放射性医薬品は、放射性物質(RI、ラジオアイソトープ)を含んだ薬剤を注射などで体内に投与し、その薬剤から出る放射線によって治療するもので、特に骨転移に治療効果が見られます。骨転移への対応では月に1回の注射または点滴による骨修飾薬の投与を行いますが、れには破骨細胞に作用して、骨が過剰に破壊されるのを阻止する働きがあります。骨転移には鎮痛薬も使います。最近は痛みを我慢するよりは、こうした薬を早い段階からしっかり使って痛みで苦しまずに日々を過ごしていただいたほうがいいのではないかという流れになっています。

骨転移の症状

骨転移については、痛みやしびれなど「ちょっとおかしいかも」とたときには早めに主治医に伝えていただくことで、他科とも連携しながら適切な治療を行うことが可能になります。

インターネット調査では、医師にQOLを気にしてほしいという方が7割いるのですが、実際に主治医と話し合った方は2割程度にとどまっています。外来などで忙しそうに見せてしまっているのであれば、私たち医療者も反省すべき点もあると思うのですが、実際に話し合ったことがあると答えた人の8割が主治医から何らかの助言や提案を得られたと答えています。ぜひ遠慮せず、積極的に相談してほしいと思います。

 

転移の早期発見・治療のために放射線でできること

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柴田 徹 先生

香川大学医学部附属病院 放射線治療科 教授

前立腺がんとは長いつきあいとなることが多く、まさに「山あり谷あり」です。 PSAの数値をモニターしながら、必要に応じて画像検査を追加して現状評価を行い、適切な時期に必要な治療を受けることが一番大切です。

前立腺がんの放射線治療の方法

前立腺がんの放射線治療には大きく分けて外部照射と内部照射があります。外部照射とは、体外から病巣に向けて放射線を照射する方法で、ニアックを用いて高エネルギーX線を照射するのが一般的です。
そのほか最近話題になっている陽子線や重粒子線を使う粒子線照射もあります。

一方、内部照射には、骨に集積しやすい性質を持つ放射性同位元素(RI)を注射し、病巣内部から放射線を照射する非密封RI内用療法や、ヨードを使って前立腺の中に埋め込むようなスタイルで体内から照射を行う密封小線源永久挿入療法があります。

外部照射

リニアックを用いる外部照射技術の進歩について説明します。従来型の治療として3次元原体照射法(3D-CRT)があります。CT画像を用いて前立腺や直腸や膀胱(リスク臓器)の形状を立体的に把握して多方向からの照射野を整形することができますが、標的とリスク臓器が複雑に近接して重なる場合に、正常臓器への照射が避けられず有害反応が問題となりうるという弱点がありました。

この限界を解決できる治療技術がIMRT(強度変調放射線治療)です。日本では2000年頃から導入が始まり、香川大学医学部付属病院では2014年から実施しています。従来型の治療では、多方向から均一なビームを重ねて標的への線量の集中性を高めますが、近接するリスク臓器に腫瘍と同様の放射線量が照射されてしまいます。一方、IMRTではコンピューター技術を駆使してビームの強度を自在に変えることにより。線量の分布を最適化できます。その結果、IMRTでは腫瘍の形に合わせた高線量の集中を図りつつ、周辺の正常臓器をうまく避けて線量を大幅に減らすことができます。大幅に減らす技術を同時に達成することができます。

一般的に、腫瘍への線量が高くなれば治療効果も高くなります。前立腺がんの場合も、IMRTを用いた線量増加により治療成績の改善につながると期待されます。一方、放射線治療に伴う代表的な有害反応として晩期直腸出血があります。自験例においては、従来法では10〜15%程度の発生が避けられませんが、IMRTを用いて直腸線量を低減することで、3~4%程度に低下できました。つまり、IMRTは治療効果がより高く、なおかつ安全性に優れた治療と言えます。最近では、IMRTの発展型として回転しながらより自由度の高い照射ができる強度変調回転照射法(VMAT)も出てきています。

前立腺がんは骨転移を起こしやすいことが知られていますが、転移性骨腫瘍による脊髄圧迫には注意が必要です。背中の痛みが急に増強したり、下肢の脱力や麻痺、膀胱直腸障害が起こった時などには即時に対応することが重要です。
緊急照射や外科的な除圧術の適応の判断が望まれます。

がんの治療はまさに日進月歩で、次々に新しい治療技術や薬剤などが開発されています。複数の専門医からアドバイスをもらい、最新の情報に基づく有効な治療を考え、希望に沿う決定を支援してもらうようにしましょう。

アンサーパッドを用意た会場アンケート(患者さん回答、任意)

 

転移の早期発見のために放射線でできること

放射線治療のメカニズムについて説明します。放射線をあてれば、正常細胞もがん細胞も同じように傷つきますが、傷ついた状態で時間を置くと、正常な細胞はDNAについた傷を修復でき、少し回復します。一方、がん細胞は自分自身で回復する力が弱いため、傷が残ったままとなります。時間をあけてもう1回、放射線治療を行うと、ダメージが重なることで正常細胞よりもがん細胞が多く死んでいきます。こうして照射を20回、30回と積み重ねることで、がん細胞を倒していくのが放射線治療です。放射線治療はその目的によってがんを治すための根治治療と、がんに伴う痛みなどの症状を抑えようという緩和治療に分かれます。その方法は大きく3つあります。まずは体の外から照射する外部放射線治療があり、前立腺がんそのものや転移した病巣が治療対象になります。残りの2つは組織内照射で放射線を出す金属を前立腺に送り込み前立腺がんの治療を行う小線源治療と、もう1つはラジオアイソトープを使用した内用療法(RI内用療法)です。こちらは骨転移病巣が主な治療対象です。

〈外部放射線治療〉

主に使う放射線はX線や電子線(β線)になり、治療装置はリニアックと呼ばれます。前立腺がんの場合は体の奥に病巣があるので、X線を使った治療になります1方向からだけでは奥まで届くものの、表面ばかりが強く当たってしまいますし、周辺の関係ないとこも被ばくしてしまいます。そこで2方向、4方向、8方向と複数の方向から照射することで、周りの被ばくを減らす治療も行われています。骨転移に対する放射線治療の効果としては、まずは痛みの緩和があり、実際6、7割の方は痛みが緩和され、全体の2割から3割の方は痛みが完全に消えたという調査結果※)があります。また、麻痺の制御・予防や、病的骨折の予防のために放射線治療を行うこともあります。回数は10回が多いですが、1回や5回というケースもあります。強度変調放射線治療(IMRT)という新しい照射法も出てきました。最新のコンピューター技術を使って、放射線の強さの調子を変えて行うもので、これにより、強く照射したいところには強く、あまり当てたくないところには弱くという調整が可能になっています。前立腺の後ろ側には直腸があり、従来の方法では強く当たってしまいましたが、強度変調放射線治療を使うと後ろの直腸にはあまり当てないように治療できるので、直腸出血という副作用のリスクを下げることができるようになっています。

〈組織内照射〉

私どもの病院では、現在2種類の小線源治療を使うことができます。一つは高線量率小線源治療というもので、非常に短時間に強い放射線を出す線源を前立腺に針で刺すものです。装置には、ワイヤーにつながった小線源が格納されていて、治療の時だけ小線源が出てきて、放射線をあてて終わるという形になります。現在は1回で13㏉の治療を行っています。もう一つは密封小線源治療で、5mmの長さのシャープペンシルの芯のような形状のものを、前立腺の中に数十個埋め込むもので、放射線科と泌尿器科の医師が一緒に行います。最後にラジオアイソトープ(RI)内用療法ですが、これはRIという薬を注射すると、生理的な性質から病巣に勝手に分布し、そこで電子線(β線)あるいはα線が出て治療をしてくれるというものです。前立腺がんの骨転移ではα線を使った治療が可能となります。去勢抵抗性前立腺がんで骨転移のある方にこの薬を注射すると勝手に骨転移病巣に行き、α線を出すことで痛みをとり、がんを抑制してくれます。

前立腺がん転移について知ってほしいこと

上松 克利 先生

三豊総合病院 泌尿器科 部長

骨転移を起こすことでもっとも問題となるのはいわゆるQOL(生活の質)です。QOLの問題は患者さん自身から発信してもらわないとわかりません。 ぜひ遠慮せず、積極的に相談してほしいと思います。

前立腺がんの転移で多いのは骨転移

前立腺がんは非常につきあいが長くなる病気といわれています。がんと診断された人が5年後に生存している割合を示す5年相対生存率という指標がありますが、全がんの5年相対生存率が60%程度なのに対し、前立腺がんでは97.5%と高くなっています※1。

前立腺がんは骨への転移が多いのが特徴です。ホルモン治療が効かなくなった状態のものを去勢抵抗性前立腺がんといいますが、その場合の骨転移の頻度は80%以上と知られています。

骨転移の検査と治療

骨転移の検査としては、血液検査であるPASという腫瘍マーカーがよく使われており、大きな指標になります。何らかの治療を行っていてもこのPSAの数値が上がっていけば、それはがんの勢いを示すものになるので、骨転移を疑うことがあります。また、血液検査や尿検査による骨代謝マーカーというものもあり、骨に破壊があったり、何らかの影響があったりすると数値が上がります。疑いがある場合には骨シンチグラフィーで画像診断を行います。骨シンチは、骨転移の部位に集まる性質を持つ放射線物質を含む薬剤を血管内に注射して全身の骨を撮影するもので、骨転移の部位に薬剤が集まり黒く写し出されます。最終的にはCTやMRIの検査を行って確定することが一般的です。

前立腺がんの薬物治療には、主にホルモン療法、化学療法、放射線医薬品の3つがあります。
ホルモン療法は転移やある程度の進行が見られる場合に柱となる治療で、男性ホルモンの分泌や働きを妨げることにより、がん細胞の増殖を抑えていくものです。この効きが悪い場合やがんが再び増殖した後には化学療法となりますが、最近は前倒しで行われることが増えており、最初の段階でリスクが高いがんだと診断した場合は、ホルモン治療と合わせて早い段階で化学療法を行うことがあります。放射性医薬品は、放射性物質(RI、ラジオアイソトープ)を含んだ薬剤を注射などで体内に投与し、その薬剤から出る放射線によって治療するもので、特に骨転移に治療効果が見られます。骨転移への対応では月に1回の注射または点滴による骨修飾薬の投与を行いますが、れには破骨細胞に作用して、骨が過剰に破壊されるのを阻止する働きがあります。骨転移には鎮痛薬も使います。最近は痛みを我慢するよりは、こうした薬を早い段階からしっかり使って痛みで苦しまずに日々を過ごしていただいたほうがいいのではないかという流れになっています。

骨転移の症状

骨転移については、痛みやしびれなど「ちょっとおかしいかも」とたときには早めに主治医に伝えていただくことで、他科とも連携しながら適切な治療を行うことが可能になります。

インターネット調査では、医師にQOLを気にしてほしいという方が7割いるのですが、実際に主治医と話し合った方は2割程度にとどまっています。外来などで忙しそうに見せてしまっているのであれば、私たち医療者も反省すべき点もあると思うのですが、実際に話し合ったことがあると答えた人の8割が主治医から何らかの助言や提案を得られたと答えています。ぜひ遠慮せず、積極的に相談してほしいと思います。

 

転移の早期発見・治療のために放射線でできること

柴田 徹 先生

香川大学医学部附属病院 放射線治療科 教授

前立腺がんとは長いつきあいとなることが多く、まさに「山あり谷あり」です。
PSAの数値をモニターしながら、必要に応じて画像検査を追加して現状評価を行い、適切な時期に必要な治療を受けることが一番大切です。

前立腺がんの放射線治療の方法

前立腺がんの放射線治療には大きく分けて外部照射と内部照射があります。外部照射とは、体外から病巣に向けて放射線を照射する方法で、ニアックを用いて高エネルギーX線を照射するのが一般的です。
そのほか最近話題になっている陽子線や重粒子線を使う粒子線照射もあります。

一方、内部照射には、骨に集積しやすい性質を持つ放射性同位元素(RI)を注射し、病巣内部から放射線を照射する非密封RI内用療法や、ヨードを使って前立腺の中に埋め込むようなスタイルで体内から照射を行う密封小線源永久挿入療法があります。

外部照射

リニアックを用いる外部照射技術の進歩について説明します。従来型の治療として3次元原体照射法(3D-CRT)があります。CT画像を用いて前立腺や直腸や膀胱(リスク臓器)の形状を立体的に把握して多方向からの照射野を整形することができますが、標的とリスク臓器が複雑に近接して重なる場合に、正常臓器への照射が避けられず有害反応が問題となりうるという弱点がありました。

この限界を解決できる治療技術がIMRT(強度変調放射線治療)です。日本では2000年頃から導入が始まり、香川大学医学部付属病院では2014年から実施しています。従来型の治療では、多方向から均一なビームを重ねて標的への線量の集中性を高めますが、近接するリスク臓器に腫瘍と同様の放射線量が照射されてしまいます。一方、IMRTではコンピューター技術を駆使してビームの強度を自在に変えることにより。線量の分布を最適化できます。その結果、IMRTでは腫瘍の形に合わせた高線量の集中を図りつつ、周辺の正常臓器をうまく避けて線量を大幅に減らすことができます。大幅に減らす技術を同時に達成することができます。

一般的に、腫瘍への線量が高くなれば治療効果も高くなります。前立腺がんの場合も、IMRTを用いた線量増加により治療成績の改善につながると期待されます。一方、放射線治療に伴う代表的な有害反応として晩期直腸出血があります。自験例においては、従来法では10〜15%程度の発生が避けられませんが、IMRTを用いて直腸線量を低減することで、3~4%程度に低下できました。つまり、IMRTは治療効果がより高く、なおかつ安全性に優れた治療と言えます。最近では、IMRTの発展型として回転しながらより自由度の高い照射ができる強度変調回転照射法(VMAT)も出てきています。

前立腺がんは骨転移を起こしやすいことが知られていますが、転移性骨腫瘍による脊髄圧迫には注意が必要です。背中の痛みが急に増強したり、下肢の脱力や麻痺、膀胱直腸障害が起こった時などには即時に対応することが重要です。
緊急照射や外科的な除圧術の適応の判断が望まれます。

がんの治療はまさに日進月歩で、次々に新しい治療技術や薬剤などが開発されています。複数の専門医からアドバイスをもらい、最新の情報に基づく有効な治療を考え、希望に沿う決定を支援してもらうようにしましょう。

アンサーパッドを用意た会場アンケート(患者さん回答、任意)