前立腺がんセミナー in 宮崎

もっと話そう前立腺がん転移のこと
くらしを守る早期対応のすすめ

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2019年9月23日(月・祝) 14:00〜17:00
宮日会館(宮崎市)

当日は67名(患者27名を含む)が来場し、座長からの質問にアンサーパッドを用意て回答していただく、参加型のセミナーとなりました。

本ページではご講演を抜粋してご紹介しています。全文はWebでご覧いただけます。
https://www.cancernet.jp/zenritsusen190923

座長より


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賀本 敏行 先生

宮崎大学医学部 発達泌尿生殖医学講座 泌尿器科学分野 教授

患者さんの中には、できれば病気のことは知らない方がいいとか、知りたくないといった気持ちもある方もいるかと思いますが、こういう時代ですので正確な情報の入手を心がけていただきたいと思います。ネットや本などでは怪しげな治療法を紹介していたりします。「藁をもつかむ気持ち」で、そうした情報に飛びついてしまう方もいるようですが、みなさんにはぜひ主治医と円滑な関係を築いていただき、自身で正しい知識を得ながら、病気に向き合っていただきたいと思います。

治療と向き合う上で大切なこと〜骨転移を体験して

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川﨑 陽二 さん

どんな名医でも、本人の骨の痛みというのは、訴えないと分かってはくれません。
訴えることではじめて、最善の治療を受けることができるからです。

私の前立腺がんが見つかったのは今から7年前で最初から骨転移があり、治療前のPSA700.68、グリソンスコア10でしたから、みなさんにもその時の私のショックの度合いが分かっていただけるかと思います。がん宣告を受けたときには、がん自体を率直に受け止められなかったですし、骨転移についても理解していませんでした。私自身、変な勘違いをしていて、当時介護の現場で働いていたのですが「介護職にとって腰痛は勲章」と考えてしまっていました。また、50代になり、肩こりも年齢的なものなのかと思っていた部分があったのです。

最初から骨転移の痛みがあったため放射線治療を受けました。そこから4年間は痛みが非常に少なく済んでQOLも高く、仕事もバリバリやっていたように思います。しかしその後は骨転移からくる腰部脊椎狭窄症に悩まされ、ブロック治療や内視鏡による除圧術を受け、現在に至っております。ブロック注射は痛み緩和のために脊髄と脊椎の間に打っていたのですが、それだけでは痛みを緩和できず、2017年の2月に受けたのが腰部脊椎除圧術でした。背中を30センチほど切り、3カ月近くの入院が必要でしたが、痛みがとれず昨年7月に受けたのが腰部脊椎内視鏡術です。その後は、基本的にはがん治療を受けながらごく普通の生活を送っていますし。それを目標にしてきました。一部身体的に制限する仕事はあるものの介護福祉士として現場復帰もしています。

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これまでの治療で受けてよかったものとしては、最初の放射線緩和治療が挙げられます。これによって骨転移の痛みがかなり改善されました。また、治療の影響であごの骨がもろくなりやすいため、口腔外科にも4週間に1回通い、泌尿器科や整形外科とも連携を取っていただいています。歯はいつまでも大切にしたいと思っていますし、骨転移がある方は口腔管理も大切にしてほしいと思っています。

これまでに苦しかったことや辛かったことはたくさんありますが、夜眠れない状態が1週間続いたときの痛みは経験しないとわからないと思います。骨転移そのものだけではなく、脊柱管狭窄症や新たな関節炎などにも悩まされました。日によって歩行が困難なこともあり、転倒防止のために杖を使うこともあります。前立腺がんの場合は、がん患者だと言わなければ外見上理解されないという点も苦しかったですね。職場にも理解されず「やめてほしい」と言われたのは辛かったです。

最後にみなさんにお伝えしたいのは、小さな症状を訴えることの大切さです。今までにない背中の痒さや、針でつつくような痛みなどを感じた時も、とりあえずは主治医に伝えてください。

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患者さん個人のご経験をお話しいただきました。すべての患者さんが同様の経過を示すわけではありません。

前立腺がん転移について知ってほしいこと

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寺田 直樹 先生

宮崎大学医学部附属病院 泌尿器科 講師

前立腺がんは他のがんと比べて予後が非常に良好です。全がんの遠隔転移のある方の5年生存率は20%以下という厳しい現状ですが、前立腺がんだけに絞るとその率は40%を超えます。※1自分の気持ちをしっかり主治医に伝えることは、QOL(生活の質)の改善にも有効です。ぜひ医師との良好なコミュニケーションを心がけてほしいと思います。

前立腺がんの治療

前立腺がんのリスク分類は、PSAの数値とグリソンスコア、さらにTNM(病期)分類の3つの因子を組み合わせて判別されます。TNM分類のTは局所である前立腺自体の状態、Nはリンパ節転移、Mは遠隔転移のことを示しており、カテゴリーで評価します。また、グリソンスコアは、針で前立腺の組織を取って顕微鏡で見ることで、主な二つのがん集団をそれぞれ5段階評価したもの※2です。「3+4=7」とか「4+5=9」といった形でスコア化します。数値が高ければそれだけ前立腺がんの悪性度が高いということです。

一般的には、中リスクの限局性がんについては手術、局所進行がんあるいは、高齢患者の場合はホルモン療法と放射線の併用、診断時から転移がある場合にはホルモン療法がそれぞれ治療の第一選択とされます。また、グリソンスコアが6点かつ、PSAが低く、たまたま検査で見つかったようなものを偶発がんあるいは低リスクがんといいますが、そうした場合には監視療法といって、何も治療をせずに経過を見るということがあります。

再発をきたした場合の2次治療も規定があり、それまで監視療法だった場合は手術や放射線治療、手術の後は放射線治療あるいはホルモン療法、放射線治療の後はホルモン療法、ホルモン療法で増悪していれば抗がん剤といった流れになります。

前立腺がん診断時に遠隔転移があった患者さんを対象に、その転移がどこに見つかったかを調べた当院の調査では、88%で骨への転移があり、次に多かったのはリンパ節、さらに肺、肝臓と続きます。骨転移は、前立腺の中のがん細胞の一部が血管の流れにのって骨に移動、そこにすみについて移植することで起こります。

転移した前立腺がんに対して行われるのが、男性ホルモン(アンドロゲン)をブロックするホルモン療法です。(アンドロゲンは前立腺の中のがん細胞の増殖を促進する働きがあります)。これにプラスして抗アンドロゲン剤を併用するのが複合アンドロゲン遮断(CAB)療法です。こうしたホルモン療法は平均2年ほどで効かなくなってしまいますが、その後の追加治療としては現時点で10種類もの薬が使用可能であり、これらの薬についてタイミングを見計らいながら追加していくことで、転移性前立腺がんのコントロールを行なっています。

前立腺がんと骨との関係について

骨転移には溶骨性転移と造骨性転移の2種類があります。前立腺がんには造骨性転移が多く、これは骨芽細胞という骨をつくる細胞が増殖するもので、骨を溶かすのではなく骨を作っていく転移であり、この造骨性転移が多いことも、前立腺がんの予後がいい理由の一つになっています。ただ、全てが造骨性転移ではなくて溶骨性も含んだ混合性であることが多いというのが現状です。

骨転移の症状では、痛みの他、手足のしびれや麻痺が起こります。予防のためには、無理のない運動で骨密度を上げるといいでしょう。カルシウムの摂取や転倒防止のための室内の整理整頓も心がけましょう。また、骨修飾薬というものを使用することで骨折を防ぐこともできます。これは破骨細胞の作用を抑制して骨芽細胞の活性化を増強します。こういった薬も使いながら骨転移をコントロールしていきます。

痛みやしびれの症状というのは、最初は小さな違和感からどんどん進行して起こります。前立腺がんの骨転移では脊髄に転移することが多く、そこにがんが侵入していくと、足のしびれ、麻痺という症状が出てしまいます。麻痺の場合、発生して48時間以上経過すると、そのまま全く足がうごかなくなるというリスクがありますから、手足がしびれる、力が入らない、足のもつれや踏ん張りがきかないという症状が起こったら必ず主治医に伝えてください。

※1 国立がん研究センター がん対策情報サービス

※2 組織中の細胞から、数が多い順に2種類を選び、それぞれの悪性度を5段階評価したもの

転移の早期発見・治療のために放射線でできること

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楠原 和朗 先生

宮崎大学医学部附属病院 放射線科 助教 (現在:宮崎県立延岡病院 放射線科)

放射線治療は、放射線によって腫瘍そのものを壊すものではありません。 人間の体を構成している細胞核内にある遺伝子を壊すことで、がん細胞の世代交代をストップさせ、腫瘍細胞を減らすというのが放射線治療です。かなり症状が出てきてからでは放射線を使った治療が難しくなってしまうことがありますので、痛みが小さなうちに我慢せずに主治医に訴えるようにしていただきたいと思います。

画像検査

前立腺がんは骨転移が多い病気です。多くの患者さんは、初発のときに少なくとも骨シンチグラフィや単純X線写真(レントゲン写真)、病変が見つかった方はCT(コンピューター断層撮影)などによる検査を受けているのではないでしょうか。

診断としては放射線を使った検査が治療の指針として重要になりますし、初期であれば骨シンチが優先ですし、それ以降の経過ということになればPSAが再度上がってきた時点で また骨シンチをしたり、病変の確認ができた時点でCTを撮ったりMRIを撮ったりします。PET CTを撮ったりすればリンパ節転移を含めた一括での他の転移も評価ができます。

検査はそれぞれ長所・短所を持ち合わせているため、基本的には全部使うというのが理想ですが、実際は保険診療や金銭的負担などの問題もあり、「随時必要とされる方に使う」ということになります。こうした検査結果を参考に放射線治療科ではその治療が適用になりうるかどうかを判断します。

前立腺がんにおける放射線治療

骨転移の治療ですが、麻痺改善のための整形外科での緊急の手術を除き、基本は標準治療である薬物療法です。化学療法やホルモン療法、骨修飾薬療法などを行うほか、局所への放射線療法、放射性医薬品を体内に投与して体の中から治療するRI内用療法が今積極的に行われています。放射線を外から照射する治療(外照射)については、治療導入が比較的容易で、コストが比較的安価であること、また、痛みのある箇所、症状が出そうな箇所だけを治療でき、反復治療に使いやすいという長所があります。ただ、逆に広く治療することが難しく、また、痛みが強くじっとしていられない患者さんは使い難いといった点があります。一方で、RI内用療法は、注射によって体の中の必要な箇所に取り込まれて、そこでアルファ線あるいはベータ線を放出することで内側から治療するものです。全身をくまなく治療するのに向いている反面、治療効果が短期間では得にくく、コストが高い、長期経過内での反復治療が制限されているといった問題があり、初回治療のみというスタンスで臨む必要があります。

放射線治療はがん治療としては、入口から出口まで全ての段階で使うことが可能です。かつては緩和治療として行うことがほとんどでしたが、現在は根治を目指す治療において照射を行うことが主となっています。

緩和照射という考え方は患者さんの症状に対して迅速に効果を発現させることで、1日2日しか時間的猶予がないという緊急性のある照射を含みます。また前立腺がんは予後が長いので、長期的な効果を期待し、症状が出てくるのを事前に防ぐ、あるいはすぐにでも症状が出そうだという時には出る前に症状を叩くという考え方で治療することもあります。

骨転移に対する緩和照射の目的は除痛、脊髄の障害による麻痺の改善・予防、骨折予防があります。大腿骨などの四肢骨を骨折すると日常生活が困難になり、寝たきりになるリスクがあり、それを事前に予防することが重要です。
骨転移の局所の痛みに対しての放射線治療はグローバルスタンダードとしてずっと使われているものです。

骨転移の痛み・麻痺に対する治療と骨折予防

そもそも骨転移がなぜ痛むかですが、大きく3つの原因があります。まず骨にも痛点はありますから、骨そのものが痛むもの、骨が腫瘍によって膨らむことで周りの神経を圧迫することでも痛みが出ます。また、脊髄など大きな神経の近くで神経そのものを腫瘍が圧迫することによる痛みもあります。

骨転移の痛みに対し、放射線治療はこのすべてに効きますが、特に骨そのものの痛みに対し、短期間で大線量を照射することで除痛効果が出やすいといえます。逆に腫瘍そのものによって痛いという場合には照射を小分けにして腫瘍を縮小させることで疼痛を抑える効果を求めます。

骨転移によって起こるさまざまな問題を骨関連事象といいますが、そうした事象が最終的に何を引き起こすかといえば、生存期間の短縮です。前立腺がんのように予後が長く期待できる患者さんであればあるほど、患者さんのQOLを下げないよう放射線を積極的に使うことが勧められています。

転移の早期発見のために放射線でできること

放射線治療のメカニズムについて説明します。放射線をあてれば、正常細胞もがん細胞も同じように傷つきますが、傷ついた状態で時間を置くと、正常な細胞はDNAについた傷を修復でき、少し回復します。一方、がん細胞は自分自身で回復する力が弱いため、傷が残ったままとなります。時間をあけてもう1回、放射線治療を行うと、ダメージが重なることで正常細胞よりもがん細胞が多く死んでいきます。こうして照射を20回、30回と積み重ねることで、がん細胞を倒していくのが放射線治療です。放射線治療はその目的によってがんを治すための根治治療と、がんに伴う痛みなどの症状を抑えようという緩和治療に分かれます。その方法は大きく3つあります。まずは体の外から照射する外部放射線治療があり、前立腺がんそのものや転移した病巣が治療対象になります。残りの2つは組織内照射で放射線を出す金属を前立腺に送り込み前立腺がんの治療を行う小線源治療と、もう1つはラジオアイソトープを使用した内用療法(RI内用療法)です。こちらは骨転移病巣が主な治療対象です。

〈外部放射線治療〉

主に使う放射線はX線や電子線(β線)になり、治療装置はリニアックと呼ばれます。前立腺がんの場合は体の奥に病巣があるので、X線を使った治療になります1方向からだけでは奥まで届くものの、表面ばかりが強く当たってしまいますし、周辺の関係ないとこも被ばくしてしまいます。そこで2方向、4方向、8方向と複数の方向から照射することで、周りの被ばくを減らす治療も行われています。骨転移に対する放射線治療の効果としては、まずは痛みの緩和があり、実際6、7割の方は痛みが緩和され、全体の2割から3割の方は痛みが完全に消えたという調査結果※)があります。また、麻痺の制御・予防や、病的骨折の予防のために放射線治療を行うこともあります。回数は10回が多いですが、1回や5回というケースもあります。強度変調放射線治療(IMRT)という新しい照射法も出てきました。最新のコンピューター技術を使って、放射線の強さの調子を変えて行うもので、これにより、強く照射したいところには強く、あまり当てたくないところには弱くという調整が可能になっています。前立腺の後ろ側には直腸があり、従来の方法では強く当たってしまいましたが、強度変調放射線治療を使うと後ろの直腸にはあまり当てないように治療できるので、直腸出血という副作用のリスクを下げることができるようになっています。

〈組織内照射〉

私どもの病院では、現在2種類の小線源治療を使うことができます。一つは高線量率小線源治療というもので、非常に短時間に強い放射線を出す線源を前立腺に針で刺すものです。装置には、ワイヤーにつながった小線源が格納されていて、治療の時だけ小線源が出てきて、放射線をあてて終わるという形になります。現在は1回で13㏉の治療を行っています。もう一つは密封小線源治療で、5mmの長さのシャープペンシルの芯のような形状のものを、前立腺の中に数十個埋め込むもので、放射線科と泌尿器科の医師が一緒に行います。最後にラジオアイソトープ(RI)内用療法ですが、これはRIという薬を注射すると、生理的な性質から病巣に勝手に分布し、そこで電子線(β線)あるいはα線が出て治療をしてくれるというものです。前立腺がんの骨転移ではα線を使った治療が可能となります。去勢抵抗性前立腺がんで骨転移のある方にこの薬を注射すると勝手に骨転移病巣に行き、α線を出すことで痛みをとり、がんを抑制してくれます。

前立腺がん転移について知ってほしいこと

寺田 直樹 先生

宮崎大学医学部附属病院 泌尿器科 講師

前立腺がんは他のがんと比べて予後が非常に良好です。全がんの遠隔転移のある方の5年生存率は20%以下という厳しい現状ですが、前立腺がんだけに絞るとその率は40%を超えます。※1自分の気持ちをしっかり主治医に伝えることは、QOL(生活の質)の改善にも有効です。ぜひ医師との良好なコミュニケーションを心がけてほしいと思います。

前立腺がんの治療

前立腺がんのリスク分類は、PSAの数値とグリソンスコア、さらにTNM(病期)分類の3つの因子を組み合わせて判別されます。TNM分類のTは局所である前立腺自体の状態、Nはリンパ節転移、Mは遠隔転移のことを示しており、カテゴリーで評価します。また、グリソンスコアは、針で前立腺の組織を取って顕微鏡で見ることで、主な二つのがん集団をそれぞれ5段階評価したもの※2です。「3+4=7」とか「4+5=9」といった形でスコア化します。数値が高ければそれだけ前立腺がんの悪性度が高いということです。

一般的には、中リスクの限局性がんについては手術、局所進行がんあるいは、高齢患者の場合はホルモン療法と放射線の併用、診断時から転移がある場合にはホルモン療法がそれぞれ治療の第一選択とされます。また、グリソンスコアが6点かつ、PSAが低く、たまたま検査で見つかったようなものを偶発がんあるいは低リスクがんといいますが、そうした場合には監視療法といって、何も治療をせずに経過を見るということがあります。

再発をきたした場合の2次治療も規定があり、それまで監視療法だった場合は手術や放射線治療、手術の後は放射線治療あるいはホルモン療法、放射線治療の後はホルモン療法、ホルモン療法で増悪していれば抗がん剤といった流れになります。

前立腺がん診断時に遠隔転移があった患者さんを対象に、その転移がどこに見つかったかを調べた当院の調査では、88%で骨への転移があり、次に多かったのはリンパ節、さらに肺、肝臓と続きます。骨転移は、前立腺の中のがん細胞の一部が血管の流れにのって骨に移動、そこにすみについて移植することで起こります。

転移した前立腺がんに対して行われるのが、男性ホルモン(アンドロゲン)をブロックするホルモン療法です。(アンドロゲンは前立腺の中のがん細胞の増殖を促進する働きがあります)。これにプラスして抗アンドロゲン剤を併用するのが複合アンドロゲン遮断(CAB)療法です。こうしたホルモン療法は平均2年ほどで効かなくなってしまいますが、その後の追加治療としては現時点で10種類もの薬が使用可能であり、これらの薬についてタイミングを見計らいながら追加していくことで、転移性前立腺がんのコントロールを行なっています。

前立腺がんと骨との関係について

骨転移には溶骨性転移と造骨性転移の2種類があります。前立腺がんには造骨性転移が多く、これは骨芽細胞という骨をつくる細胞が増殖するもので、骨を溶かすのではなく骨を作っていく転移であり、この造骨性転移が多いことも、前立腺がんの予後がいい理由の一つになっています。ただ、全てが造骨性転移ではなくて溶骨性も含んだ混合性であることが多いというのが現状です。

骨転移の症状では、痛みの他、手足のしびれや麻痺が起こります。予防のためには、無理のない運動で骨密度を上げるといいでしょう。カルシウムの摂取や転倒防止のための室内の整理整頓も心がけましょう。また、骨修飾薬というものを使用することで骨折を防ぐこともできます。これは破骨細胞の作用を抑制して骨芽細胞の活性化を増強します。こういった薬も使いながら骨転移をコントロールしていきます。

痛みやしびれの症状というのは、最初は小さな違和感からどんどん進行して起こります。前立腺がんの骨転移では脊髄に転移することが多く、そこにがんが侵入していくと、足のしびれ、麻痺という症状が出てしまいます。麻痺の場合、発生して48時間以上経過すると、そのまま全く足がうごかなくなるというリスクがありますから、手足がしびれる、力が入らない、足のもつれや踏ん張りがきかないという症状が起こったら必ず主治医に伝えてください。

※1 国立がん研究センター がん対策情報サービス

※2 組織中の細胞から、数が多い順に2種類を選び、それぞれの悪性度を5段階評価したもの