前立腺がんセミナー in 金沢

もっと話そう前立腺がん転移のこと
くらしを守る早期対応のすすめ

Alt tag

2019年10月14日(月・祝) 14:00〜17:00
金沢歌劇座(金沢市)

当日は93名(患者48名を含む)が来場し、座長からの質問にアンサーパッドを用意て回答していただく、参加型のセミナーとなりました。

本ページではご講演を抜粋してご紹介しています。全文はWebでご覧いただけます。
https://www.cancernet.jp/zenritsusen191014

座長より


Alt tag

溝上 敦 先生

金沢大学大学院医学系研究科 集学的治療分野泌尿器科 教授

患者さんと医師とのコミュニケーションはまだちょっと足りないかなという印象を持ちました。コミュニケーション不足で治療が後手後手になってしまうことがあります。ですから副作用なり症状なり、本当に遠慮なく主治医の先生に相談していただきたいと思いますし、それによって主治医との関係もよくなります。我慢だけは絶対にしないでください。

治療と向き合う上で大切なこと〜骨転移を体験して

Alt tag

堀内 隆 さん

今は、「やちたいことを今のうちにやっておこう」と考えています。
いつかは死んでしまうということだけでなく、骨転移の場合、進行すると立ち上がれなくなったり、歩けなくなったりすことがわかっています。だからこそ、やりたいこと、会っておきたい人、行っておきたいところがあるなら、後にせず今しかないと思って行動するといいのではないかと思っています。

51歳の会社員です。自然の中に身をおき、いろいろなことを感じ取るのが好きで、特に山スキーが大好きなのですが、現在は骨転移があるので控えています。

告知をうけたとき

前立腺がんが見つかったのは、2016年10月ですから、がんと共に生きて3歳ということになります。告知前後の体調は、脚に力が入らず、立ち上がるのもしんどくて、トイレに行くのが大仕事でした。そんなひどい状況でしたから、あと1カ月くらいで死んでしまうのだろうと思っていました。告知はそういう状況で受けました。告知の際に主治医から「前立腺がんは進行が遅いからすぐ死ぬわけではないですよ」と言われましたが、当時は知識がなく、がんと聞いただけで「死んでしまう」と落ち込み、医師の言葉を素直に信じることが出来ませんでした。今思えば、それは知らないからこその不安でした。周りにがん患者がいなかったのと、ネット上に怪しい情報が多く、何を信じていいのかわからなかったのを覚えています。

骨転移の症状

前立腺がんステージ4(グリソンスコア9/PSAは705)で、すでに多発骨転移がありました。脚に踏ん張りがきかなかったのも、骨盤や肩甲骨の右側が痛かったのも骨転移によるもので、ただの腰痛だと思っていたのは、「がん」だったのです。告知を受けたころは車椅子が必須だった体が、ホルモン療法を始めると歩けるようになり、杖もいらなくなりました。病気についても少しずつ学んだこともあり、調子が回復してくると、気持ちも「いけるぞ」と上向きになりました。

化学療法を乗り切るために「ご褒美旅行」

ホルモン療法を始めて7カ月経ったころ、化学療法を勧められました。やるかやらないかは私自身が決めることだと言われ、悩んだ末にやってみることにしました。化学療法では、定期的に具合が悪くなることがわかっていましたから、始める前に職場の仲間に伝えました。どれくらいの副作用に襲われるのかわからず、正直とても怖かったです。他の患者さんの体験談を聞く機会があり、大分不安が解消されましたが、やはり化学療法の副作用で、むかつき、下痢、味覚障害、骨髄抑制、脱毛とフルコースでした。前立腺がん治療に使う薬は副作用が割と軽めだとも聞いていましたが、自分の場合はしんどくて、とても暗い日々を過ごしていました。

そんなときにある経験者の方からいただいたのが「暗い日々を乗り切るには、自分でも何かご褒美を設定しなさい」というアドバイスでした。そこで目標にしたのがご褒美旅行の「南アルプス山脈」で、5ヶ月の化学療法を終えるころには痛みが一時的になくなっていたので、最後にもう一度山登りができると嬉しい気持ちになったのを覚えています。ところが、化学療法を終えてわずか3ヶ月の2018年の1月にがんが再燃してしまいました。ホルモン療法がもう効かなくなったとわかりショックでした。それでも、骨折などのリスクなどを軽減しようと毎週トレーニングを続け、同年7月に予定通り南アルプス登山を決行しました。再燃後は別のホルモン治療薬でPSAを抑えていたのですが、それも効かなくなっており、登山を終えて1カ月後には去勢抵抗性前立腺がんのホルモン療法をスタートしました。

みなさんへのメッセージは「診察も、相談も、強い気持ちで臨む」

私の場合、旅行の計画をいろいろ立て、それを実現するために主治医とのコミュニケーションを取ってきました。大事なのは「とにかく(自分がやりたいことを)絶対やるんだ」という気持ちだと思います。そうしないと、コミュニケーションも消極的になり、計画自体もすごく小さいものになってしまいます。

Alt tag

生きる目的を持って

私は多くの友人たちから応援してもらい、勇気をもらうことで元気に活動できています。だからこそ何か恩返ししたい、勇気づけたいと思っています。今は学校や自分の会社の中で経験を話していますが、本当は自分が一番辛かったがんになったばかりの人を勇気づけたいと考えています。社内のホームページに闘病記や経験談も投稿しています。社内にいるけれど、誰にもいえずにいる患者さんもいるからです。お礼メールもいただくようになったので少しは意味があるのではないかなと思っています。

患者さん個人のご経験をお話しいただきました。すべての患者さんが同様の経過を示すわけではありません。

前立腺がん転移について知ってほしいこと

Alt tag

泉 浩二 先生

金沢大学附属病院 泌尿器科 講師

前立腺がんは地域がん登録における5年相対生存率をみると、前立腺がんにかかっている人の5年生存率は97.5%で、その間に亡くなる人は2.5%に留まっており、他のがんに比べると明らかに良い結果となっています。一方で治療期間が長くなるがんと言うこともできます。治療に伴って生活の質(QOL)が落ちてきたり、病気そのものがQOLを落とすことがありますから、QOLについても主治医と話しておくことが大事です。

前立腺がんの転移

前立腺がんは骨転移が非常に多いがんです。初診時に転移がある前立腺がんが見つかった方のうち、80%以上に骨転移がみられます。進行がんでは薬物療法を行いますが、最初の薬物療法が効かなくなったものを去勢抵抗性前立腺がんといいます。そうなった方においてもその80%以上に骨転移がみられます。大きな骨の部位に転移しやすいといわれており、特に多いのは肋骨、脊椎、骨盤、大腿骨です。前立腺がんの骨転移は、がん細胞が前立腺から出て血管に入っていき、そのがん細胞が血管を通って骨に達し、骨にすみついて増殖することで起きます。がんの種類によってどこに転移しやすいかというのはある程度決まっていますが、前立腺がんは特に骨との親和性が高く、骨に転移しやすいということになります。

骨転移には、溶骨型転移と造骨型転移がありますが、前立腺がんの場合は、造骨型であることが多いと言われています。溶骨型は骨を溶かし、その溶かしたところにがん細胞がすみつくのに対し、造骨型では、骨を溶かしはしますが、そこに骨を作る細胞が異常に活性化されてがん細胞とともに骨が増えていくというものです。症状として圧倒的に多いものは痛みで、他には痺れや麻痺、病的骨折、高カルシウム血症などがあります。特に手足のしびれや、脚の踏ん張りがきかなくなるのは、麻痺の状態としては重要な状況になりますので、早めに主治医に伝えるようにしてください。骨折も骨転移の非常に重要な症状になります。骨がもろくなり日常のちょっとした動作でも骨折しやすくなります。脊椎や大腿骨の骨折では歩けなくなりますから、それだけで QOLがかなり低下してしまいます。骨折を防ぐために、定期的な骨密度の測定や無理のない運動、カルシウムの摂取を心がけましょう。また、転倒によって骨折が起こることが非常に多いので、室内の整理整頓を心がけましょう。

骨密度の低下については、ホルモン療法の影響もあります。ホルモン療法は、前立腺がんの栄養となるアンドロゲンを遮断しようというものですが、このホルモン療法によって、骨密度が年間に2.0~4.6%程度下がるとされています。加齢そのものによっても骨密度は下がりますから、前立腺がんにおいては骨のケアが非常に重要となります。

骨転移の検査と治療

骨転移の検査としては、腫瘍マーカーのPSAがあり、骨転移の増大とともにその数値は高くなっていきます。一方で骨転移に鋭敏に反応するALPなどの骨代謝マーカーもありますが、これだけに頼るのはリスクがあります。骨転移の画像検査としてよく行われるのは、骨シンチクラフィー(骨シンチ)で、骨転移の部位に集まる性質を持つ放射線物質(ラジオアイソトープ)を血管内に投与し撮影するものです。痛みを緩和する治療では、ホルモン療法を前提として行ったうえで、骨密度を定期的に測定し、運動やカルシウム摂取を行います。さらには骨転移に対する薬物治療や鎮痛剤、放射線治療、整形外科的処置と段階を追って適宜行っていくことになります。

前立腺がんの薬物療法については、ホルモン療法の他に抗がん剤による化学療法を行うことがありますし、ラジオアイソトープなどの放射性医薬品を使って骨転移の治療を行うこともあります。 骨転移への対応という点では骨修飾薬という破骨細胞に作用する薬がよく使われています。痛み、骨折、高カルシウム血症など、QOL に大きな影響を及ぼす骨関連事象を減らすのが目的で、これによってこうした事象が必ずしもなくなるわけではありませんが、統計学的に減ることがわかっています。骨修飾薬を使う際に注意していただきたいのが、顎の骨が壊死してしまう骨吸収抑制薬関連顎骨壊死と、骨からのカルシウムの供給がなくなることで一気に血中のカルシウムが下がる低カルシウム血症です。そのためこの骨修飾薬の投与前には必ず腎機能をチェックし、歯科を受診してもらっています。また、投与中には、カルシウム、ビタミンDの投与と歯の状態のチェック、血中カルシウムの測定を必須とします。

骨転移への対応として鎮痛剤を使うこともあります。これは骨転移の痛みだけではなく全ての痛みに対して共通の原則といえますが、非オピオイド鎮痛薬から始まって、痛みの強さに応じて使っていくことになります。

転移の早期発見・治療のために放射線でできること

Alt tag

高松 繁行 先生

金沢大学附属病院 放射線治療科 科長

がん治療の三本柱は、手術、薬物療法、そして放射線治療です。放射線治療では、がん細胞に狙いをつけてそのDNAに傷をつけることで、細胞分裂や増殖を止めていきます。現在は放射線を安全に管理し、これをうまく操ることで有用な検査や治療が可能になりました。放射線は怖くないということをご理解いただき、みなさまがお困りになったときにお役に立てれば幸いです。

転移の早期発見のために放射線でできること

放射線治療のメカニズムについて説明します。放射線をあてれば、正常細胞もがん細胞も同じように傷つきますが、傷ついた状態で時間を置くと、正常な細胞はDNAについた傷を修復でき、少し回復します。一方、がん細胞は自分自身で回復する力が弱いため、傷が残ったままとなります。時間をあけてもう1回、放射線治療を行うと、ダメージが重なることで正常細胞よりもがん細胞が多く死んでいきます。こうして照射を20回、30回と積み重ねることで、がん細胞を倒していくのが放射線治療です。放射線治療はその目的によってがんを治すための根治治療と、がんに伴う痛みなどの症状を抑えようという緩和治療に分かれます。その方法は大きく3つあります。まずは体の外から照射する外部放射線治療があり、前立腺がんそのものや転移した病巣が治療対象になります。残りの2つは組織内照射で放射線を出す金属を前立腺に送り込み前立腺がんの治療を行う小線源治療と、もう1つはラジオアイソトープを使用した内用療法(RI内用療法)です。こちらは骨転移病巣が主な治療対象です。

〈外部放射線治療〉

主に使う放射線はX線や電子線(β線)になり、治療装置はリニアックと呼ばれます。前立腺がんの場合は体の奥に病巣があるので、X線を使った治療になります1方向からだけでは奥まで届くものの、表面ばかりが強く当たってしまいますし、周辺の関係ないとこも被ばくしてしまいます。そこで2方向、4方向、8方向と複数の方向から照射することで、周りの被ばくを減らす治療も行われています。骨転移に対する放射線治療の効果としては、まずは痛みの緩和があり、実際6、7割の方は痛みが緩和され、全体の2割から3割の方は痛みが完全に消えたという調査結果※)があります。また、麻痺の制御・予防や、病的骨折の予防のために放射線治療を行うこともあります。回数は10回が多いですが、1回や5回というケースもあります。強度変調放射線治療(IMRT)という新しい照射法も出てきました。最新のコンピューター技術を使って、放射線の強さの調子を変えて行うもので、これにより、強く照射したいところには強く、あまり当てたくないところには弱くという調整が可能になっています。前立腺の後ろ側には直腸があり、従来の方法では強く当たってしまいましたが、強度変調放射線治療を使うと後ろの直腸にはあまり当てないように治療できるので、直腸出血という副作用のリスクを下げることができるようになっています。

〈組織内照射〉

私どもの病院では、現在2種類の小線源治療を使うことができます。一つは高線量率小線源治療というもので、非常に短時間に強い放射線を出す線源を前立腺に針で刺すものです。装置には、ワイヤーにつながった小線源が格納されていて、治療の時だけ小線源が出てきて、放射線をあてて終わるという形になります。現在は1回で13㏉の治療を行っています。もう一つは密封小線源治療で、5mmの長さのシャープペンシルの芯のような形状のものを、前立腺の中に数十個埋め込むもので、放射線科と泌尿器科の医師が一緒に行います。最後にラジオアイソトープ(RI)内用療法ですが、これはRIという薬を注射すると、生理的な性質から病巣に勝手に分布し、そこで電子線(β線)あるいはα線が出て治療をしてくれるというものです。前立腺がんの骨転移ではα線を使った治療が可能となります。去勢抵抗性前立腺がんで骨転移のある方にこの薬を注射すると勝手に骨転移病巣に行き、α線を出すことで痛みをとり、がんを抑制してくれます。

前立腺がん転移について知ってほしいこと

泉 浩二 先生

金沢大学附属病院 泌尿器科 講師

前立腺がんは地域がん登録における5年相対生存率をみると、前立腺がんにかかっている人の5年生存率は97.5%で、その間に亡くなる人は2.5%に留まっており、他のがんに比べると明らかに良い結果となっています。一方で治療期間が長くなるがんと言うこともできます。治療に伴って生活の質(QOL)が落ちてきたり、病気そのものがQOLを落とすことがありますから、QOLについても主治医と話しておくことが大事です。

前立腺がんの転移

前立腺がんは骨転移が非常に多いがんです。初診時に転移がある前立腺がんが見つかった方のうち、80%以上に骨転移がみられます。進行がんでは薬物療法を行いますが、最初の薬物療法が効かなくなったものを去勢抵抗性前立腺がんといいます。そうなった方においてもその80%以上に骨転移がみられます。大きな骨の部位に転移しやすいといわれており、特に多いのは肋骨、脊椎、骨盤、大腿骨です。前立腺がんの骨転移は、がん細胞が前立腺から出て血管に入っていき、そのがん細胞が血管を通って骨に達し、骨にすみついて増殖することで起きます。がんの種類によってどこに転移しやすいかというのはある程度決まっていますが、前立腺がんは特に骨との親和性が高く、骨に転移しやすいということになります。

骨転移には、溶骨型転移と造骨型転移がありますが、前立腺がんの場合は、造骨型であることが多いと言われています。溶骨型は骨を溶かし、その溶かしたところにがん細胞がすみつくのに対し、造骨型では、骨を溶かしはしますが、そこに骨を作る細胞が異常に活性化されてがん細胞とともに骨が増えていくというものです。症状として圧倒的に多いものは痛みで、他には痺れや麻痺、病的骨折、高カルシウム血症などがあります。特に手足のしびれや、脚の踏ん張りがきかなくなるのは、麻痺の状態としては重要な状況になりますので、早めに主治医に伝えるようにしてください。骨折も骨転移の非常に重要な症状になります。骨がもろくなり日常のちょっとした動作でも骨折しやすくなります。脊椎や大腿骨の骨折では歩けなくなりますから、それだけで QOLがかなり低下してしまいます。骨折を防ぐために、定期的な骨密度の測定や無理のない運動、カルシウムの摂取を心がけましょう。また、転倒によって骨折が起こることが非常に多いので、室内の整理整頓を心がけましょう。

骨密度の低下については、ホルモン療法の影響もあります。ホルモン療法は、前立腺がんの栄養となるアンドロゲンを遮断しようというものですが、このホルモン療法によって、骨密度が年間に2.0~4.6%程度下がるとされています。加齢そのものによっても骨密度は下がりますから、前立腺がんにおいては骨のケアが非常に重要となります。

骨転移の検査と治療

骨転移の検査としては、腫瘍マーカーのPSAがあり、骨転移の増大とともにその数値は高くなっていきます。一方で骨転移に鋭敏に反応するALPなどの骨代謝マーカーもありますが、これだけに頼るのはリスクがあります。骨転移の画像検査としてよく行われるのは、骨シンチクラフィー(骨シンチ)で、骨転移の部位に集まる性質を持つ放射線物質(ラジオアイソトープ)を血管内に投与し撮影するものです。痛みを緩和する治療では、ホルモン療法を前提として行ったうえで、骨密度を定期的に測定し、運動やカルシウム摂取を行います。さらには骨転移に対する薬物治療や鎮痛剤、放射線治療、整形外科的処置と段階を追って適宜行っていくことになります。

前立腺がんの薬物療法については、ホルモン療法の他に抗がん剤による化学療法を行うことがありますし、ラジオアイソトープなどの放射性医薬品を使って骨転移の治療を行うこともあります。 骨転移への対応という点では骨修飾薬という破骨細胞に作用する薬がよく使われています。痛み、骨折、高カルシウム血症など、QOL に大きな影響を及ぼす骨関連事象を減らすのが目的で、これによってこうした事象が必ずしもなくなるわけではありませんが、統計学的に減ることがわかっています。骨修飾薬を使う際に注意していただきたいのが、顎の骨が壊死してしまう骨吸収抑制薬関連顎骨壊死と、骨からのカルシウムの供給がなくなることで一気に血中のカルシウムが下がる低カルシウム血症です。そのためこの骨修飾薬の投与前には必ず腎機能をチェックし、歯科を受診してもらっています。また、投与中には、カルシウム、ビタミンDの投与と歯の状態のチェック、血中カルシウムの測定を必須とします。

骨転移への対応として鎮痛剤を使うこともあります。これは骨転移の痛みだけではなく全ての痛みに対して共通の原則といえますが、非オピオイド鎮痛薬から始まって、痛みの強さに応じて使っていくことになります。

転移の早期発見・治療のために放射線でできること

高松 繁行 先生

金沢大学附属病院 放射線治療科 科長

がん治療の三本柱は、手術、薬物療法、そして放射線治療です。放射線治療では、がん細胞に狙いをつけてそのDNAに傷をつけることで、細胞分裂や増殖を止めていきます。現在は放射線を安全に管理し、これをうまく操ることで有用な検査や治療が可能になりました。放射線は怖くないということをご理解いただき、みなさまがお困りになったときにお役に立てれば幸いです。

転移の早期発見のために放射線でできること

放射線治療のメカニズムについて説明します。放射線をあてれば、正常細胞もがん細胞も同じように傷つきますが、傷ついた状態で時間を置くと、正常な細胞はDNAについた傷を修復でき、少し回復します。一方、がん細胞は自分自身で回復する力が弱いため、傷が残ったままとなります。時間をあけてもう1回、放射線治療を行うと、ダメージが重なることで正常細胞よりもがん細胞が多く死んでいきます。こうして照射を20回、30回と積み重ねることで、がん細胞を倒していくのが放射線治療です。放射線治療はその目的によってがんを治すための根治治療と、がんに伴う痛みなどの症状を抑えようという緩和治療に分かれます。その方法は大きく3つあります。まずは体の外から照射する外部放射線治療があり、前立腺がんそのものや転移した病巣が治療対象になります。残りの2つは組織内照射で放射線を出す金属を前立腺に送り込み前立腺がんの治療を行う小線源治療と、もう1つはラジオアイソトープを使用した内用療法(RI内用療法)です。こちらは骨転移病巣が主な治療対象です。

〈外部放射線治療〉

主に使う放射線はX線や電子線(β線)になり、治療装置はリニアックと呼ばれます。前立腺がんの場合は体の奥に病巣があるので、X線を使った治療になります1方向からだけでは奥まで届くものの、表面ばかりが強く当たってしまいますし、周辺の関係ないとこも被ばくしてしまいます。そこで2方向、4方向、8方向と複数の方向から照射することで、周りの被ばくを減らす治療も行われています。骨転移に対する放射線治療の効果としては、まずは痛みの緩和があり、実際6、7割の方は痛みが緩和され、全体の2割から3割の方は痛みが完全に消えたという調査結果※)があります。また、麻痺の制御・予防や、病的骨折の予防のために放射線治療を行うこともあります。回数は10回が多いですが、1回や5回というケースもあります。強度変調放射線治療(IMRT)という新しい照射法も出てきました。最新のコンピューター技術を使って、放射線の強さの調子を変えて行うもので、これにより、強く照射したいところには強く、あまり当てたくないところには弱くという調整が可能になっています。前立腺の後ろ側には直腸があり、従来の方法では強く当たってしまいましたが、強度変調放射線治療を使うと後ろの直腸にはあまり当てないように治療できるので、直腸出血という副作用のリスクを下げることができるようになっています。

〈組織内照射〉

私どもの病院では、現在2種類の小線源治療を使うことができます。一つは高線量率小線源治療というもので、非常に短時間に強い放射線を出す線源を前立腺に針で刺すものです。装置には、ワイヤーにつながった小線源が格納されていて、治療の時だけ小線源が出てきて、放射線をあてて終わるという形になります。現在は1回で13㏉の治療を行っています。もう一つは密封小線源治療で、5mmの長さのシャープペンシルの芯のような形状のものを、前立腺の中に数十個埋め込むもので、放射線科と泌尿器科の医師が一緒に行います。最後にラジオアイソトープ(RI)内用療法ですが、これはRIという薬を注射すると、生理的な性質から病巣に勝手に分布し、そこで電子線(β線)あるいはα線が出て治療をしてくれるというものです。前立腺がんの骨転移ではα線を使った治療が可能となります。去勢抵抗性前立腺がんで骨転移のある方にこの薬を注射すると勝手に骨転移病巣に行き、α線を出すことで痛みをとり、がんを抑制してくれます。