甲状腺がんにおけるRAI治療とは

――RAI(Radioactive iodine)治療とはどのような治療法でしょうか?
 

伊藤 甲状腺の全摘後、がんが取り切れずに残ってしまった場合や、転移が心配な場合、転移がある場合などにRAI治療を行います。

甲状腺は、ヨウ素を材料として甲状腺ホルモンを合成・分泌する臓器であり、体内のヨウ素のほとんどは甲状腺に取り込まれます。RAI治療はこの性質を応用した治療法です。RAI治療はその目的により二つに分けることができます。一つは全摘後に残った甲状腺組織を破壊し、再発を予防するために行うRAI治療(アブレーション)、二つ目は、転移した甲状腺がんを攻撃するために行うRAI治療(大量内用療法)であり、ここでは、二つ目のRAI治療について説明します。

RAI治療(大量内用療法)は、放射線を放出するヨウ素(放射性ヨウ素)が入ったカプセル剤を服用し、放射性ヨウ素を転移した甲状腺がんに取り込ませ、がんを攻撃する治療法です。シンチグラフィという検査法で、RAI治療によるがんの消失を確認することができます。ただし、これらの治療が行われるのは、ヨウ素を取り込む性質を持っている乳頭がんと濾胞がんのみになります。

また、RAI治療では、治療効果を高めるために、より多くの放射性ヨウ素を甲状腺がんに取り込ませる必要があります。よって、RAI治療を行う際は、海藻などのヨウ素を多く含む食品の摂取を制限し、甲状腺ホルモン薬やヨウ素を含む医薬品の使用を中止します。
 

――RAI治療はどのような施設で受けることができますか?
 

伊藤 RAI治療(大量内用療法)で放射性ヨウ素を体に取り込んだ場合、しばらくの間は汗、唾液、尿などの体液に放射性ヨウ素が含まれるため、アイソトープ病室(周囲の人々への被曝を避けるための特殊な病室)に入院して治療を行う必要があります。RAI治療が必要な患者さんの数は年々増加していますが、アイソトープ病室を持つ施設は限られています。今後、RAI治療を必要としている患者さんが、治療開始まで長期間待たされることのないよう、アイソトープ病室を持つ施設が増えるような環境の整備が必要とされます。
 

図9. RAI治療

図9. RAI治療